今年の1月に75歳になりました。
 若い時は歳をとることの意味をあまり気にしませんでしたが、今では「老いること」を真剣に考えるようになりました。
 75歳以上は後期高齢者と呼ばれています。後期高齢者について考えてみました。

後期高齢者になる

1.何が変わったか
 後期高齢者と言う言葉は厚生労働省が考えた言葉です。決して快い温かい言葉ではありません。高齢者を敬ったり、いたわったりするニュアンスは感じられません。高齢者の制度を運用するために、高齢者を分類する言葉として厚労省のお役人が考えたのだと思います。
 75歳になって変わったことが2つだけありました。
 1つは加入する健康保険が変わったことです。75歳になるまでは56歳まで勤めていた会社の組合健保の特例退職被保険者でしたが、75歳になって後期高齢者医療被保険者になり、妻は国民健康保険の被保険者になりました。組合健保でなく国民健保の加入者は、国民健保から後期高齢者医療保険に変わります。
 2つは自動車運転免許証の有効期間が3年になったことです。これからは3年ごとに免許更新の手続きが必要になります。

2.後期高齢者医療制度
 ここで後期高齢者医療制度についてまとめておきます。Wikipediaには以下のように出ていました。

後期高齢者医療制度(こうきこうれいしゃいりょうせいど)とは、日本国内に住む75歳以上の後期高齢者全員と、前期高齢者(65〜74歳)で障害のある者を対象とする、他の健康保険とは独立した日本の医療保険制度。国の医療制度改革の一環として、第3次小泉改造内閣が提出し成立した「健康保険法等の一部を改正する法律」(2006年6月21日公布)により、法律名を従来の「老人保健法」から「高齢者の医療の確保に関する法律」に変更。その内容を全面改正すると共に制度名を「老人保健制度」から「後期高齢者医療制度」に改めた。制度施行は2008年4月1日。2009年9月、後期高齢者医療制度廃止法案を提出した民主党・社民党・国民新党が政権与党となるが、後期高齢者医療制度に代わる案がないため、この制度が維持されることが決定した。」
 後期高齢者医療制度創設の目的の一つは、表向きにはされていませんが増え続ける高齢者医療費の財政負担の減らすことにもあったようです。
 保険の運営は国民健康保険と違って、都道府県を単位とする広域連合です。したがって同じ都道府県内なら同じ保険料になります。
 保険料は原則年金からの天引きですが、年金が少ない人や逆に収入が多くて保険料が高い人は、年金天引きでなく金融機関で払うことになっています。

 この制度を作ったのは自民・公明党政権で2008年4月にスタートしました。この制度創設に対しては各方面から反対意見が出されました。民主党は、その反対意見に乗り、政権獲得につながったマニュフェストに「後期高齢者医療制度の廃止」を掲げました。しかしその後普天間基地の移転問題や子供手当など、マニュフェストに足を引っ張られています。
 4月8日の読売新聞は「民主党は『後期高齢者医療廃止』にこだわるな」という社説を載せています。
「(前略)政府・民主党は、今国会に、後期高齢者医療制度の廃止法案を提出する方針だ。この動きに自民・公明党は反発を強めている。(中略)
 財源の5割を公費で、4割を現役世代の医療保険で、1割を高齢者が負担するという妥当な設計である。民主党が喧伝していた『姥捨て山制度』ではない。高齢者より、むしろ現役世代の負担が大きいと言ってよい。(中略)
 政権についた民主党も、全面廃止はできないと知っていたのだろう。マニュフェスト通り『廃止』の体裁を整えて『新制度創設』を打ち出したものの、実態は現行制度の修正と言える。『新制度』は新たな混乱を招く可能性が大きい。(中略)
 現行制度に対する批判が収まった今、自治体から制度変更を求める声はほとんど聞こえない。政府・民主党は廃止法案の提出を見送り、政治を前に進める必要がある」

 ただ、高齢者が増え、現役世代が減り、医療費が増加するのは避けられません。その現実に対して、福祉制度トータルの中で、医療制度をどうするか、国民みんなで考える必要があるようです。

残された人生を悔いなく生きるための12章

 手賀沼通信では過去2回、節目ごとに高齢者の心構えのようなものをご紹介しました。

1.明るく楽しく老齢期を過ごし惜しまれて死ぬための12章
 平成13年3月の手賀沼通信第36号に「明るく楽しく老齢期を過ごし惜しまれて死ぬための12章」を載せました。
今から約11年前、64歳のときでした。61歳でサラリーマンをやめ、手賀沼通信を書き始めてから3年目、まだ若い高齢者のころです。「死」は現実的には考えてはいません。定年を迎え、さてこれから時間と余裕ができた毎日をどう過ごすかという人のために考えた12章でした。

(1)「自立」が明るく楽しい老年期のキーワード
(2)生きがいを持とう
(3)長生きをしようなどとは思わないこと
(4)感謝の気持ちを忘れずに
(5)介護を経験してみよう
(6)地域との繋がりを持とう
(7)ITこそ高齢者のもの
(8)仲間作り、ネットワーク作りを
(9)家族を大切に
(10)健康がベース
(11)準備は若いうちから
(12)人生は楽しむもの

 項目11の「準備は若いうちから」の準備する対象は、「死」の準備ではなく、「生きがいづくり、健康づくり、仲間づくり」の準備です。
 36号の手賀沼通信でこの12章について読者の皆さまからのご意見を募り、第40号でその一部を紹介させていただきました。電子メールで26人の方から、手紙やはがきで6人の方から感想やご意見をいただきました。電話や口頭の型を含めると約40名の方がコメントくださいました。手賀沼通信の送付先が今の半分くらいの時でしたので、皆様の関心が高かったのを覚えています。

3.老いを楽しむための12章
 最初の12章を書いてから6年7か月後の平成19年10月の手賀沼通信115号に、「老いを楽しむための12章」を載せました。
 プロローグに「今年1月に70歳になり、老いを考えるようになりました。70歳を迎えた今の考えをまとめてみたいと思います」とあります。「老いは死への助走路」とも書いています。60代の12章とは、とらえ方が変わっています。
 
(1)現状を認めることからスタート
(2)人の役に立つことをする
(3)上手に大いにお金を使う
(4)おしゃれをする
(5)好きなものを食べる
(6)家を住みやすくする
(7)自然と親しむ
(8)美しいものや楽しいものを見たり聞いたりする
(9)旅行をする
(10)本を読む
(11)転ばないように気をつける
(12)そして人生の終末の準備をしよう

 前回の12章は人とのつながりに楽しみを見つけることに重点を置きましたが、ここでは個人の楽しみを重視しました。また、準備の対象は「人生の終末」でした。

4.残された人生を悔いなく生きるための12章
 75歳となった3度目のメッセージですが、基本的には前2回と変わるものではありません。ダブっているものが多いと思います。多少「楽しく」「楽しむ」というトーンから、「大切」「整理」というトーンになってきているかもしれません。

 平成22年の生命表では主な年齢の平均余命(あと何年生きられるかという年数)は次のようになっています。

現在年齢性別平均余命平均寿命
70歳15.0885.08
19.5389.53
75歳11.5886.53
15.3890.38
80歳 8.5788.57
11.5991.59

 平均余命を見るとあわてる必要はないかもしれません。しかしこれはあくまで平均です、75歳はいつ何が起こるか知れない年齢といえましょう。

(1)体の衰えを自覚しよう
 気持ちは元気なつもりでも、体は年齢相応に衰えています。中には60歳代の若さを保っている人がいるかもしれませんが、それは例外です。体のバランスが悪くなっています。筋力もなくなってきています。目がかすみ耳も遠くなります。
 家の中の事故でけがをすることが増える年齢です。庭木の手入れや家の補修などの際には特に気をつけましょう。また転ばないように気をつけましょう。

(2)頭の衰えを自覚しよう
 体と同じように頭も衰えてきています。記憶力、瞬間的な判断力などです。新しいことや難しいことに取り組む気力がなくなり、物忘れも激しくなります。人の名前を忘れたり、物の名前が出てこなかったりした方は多いでしょう。薬を飲んだかどうか忘れることもあります。出席する会をうっかり忘れることもあります。出席の返事を出したかどうかさえ覚えていないこともあります。
 メモをとり、カレンダーに予定を書き、そして毎日メモやカレンダーを見るようにしましょう。

(3)体の健康を維持しよう
 体の健康で大切なことは、今の体調を維持することです。この歳になると、よりパワーをつけるとか、よりスピードを上げるということは普通の人にとっては無理といえます。
 健康な人はその体調を維持すること、病気のある人は回復するよう努力しましょう。それがかなわぬときは、今の状態を保つか、病気の進行を出来るだけ遅らせることです。あせらず病気と上手に付き合う方法を見つけましょう。
 自分に合った健康法を見つけ体を動かしましょう。ウォーキングとか水泳とかゴルフとかテニスとかスポーツが好きな人は無理を避けながら続けることです。簡単な体操や呼吸法やヨガや太極拳なども効果的です。
 今は健康食品ブームです。あまりに種類が多いので迷ってしまいます。おそらく自分に合うものと合わないものがあると思います。実際に飲んだ人の意見などが参考になるのではないでしょうか。

(4)ボケない工夫をしよう
 ボケを防ぐには頭を使うことが大切です。勉強会やセミナーや同好会などに積極的に出て大いに頭を使いましょう。生涯学習センターなどに行けばいろいろな講座が用意されています。テレビやラジオにも語学講座や趣味の講座があります。 囲碁、将棋、健康マージャンなどもいいでしょう。
 頭だけでなく体を動かすこともぼけ防止に効果があります。

(5)人の役に立つボランティアをしよう
 健康で時間に余裕のある人は、ボランティアをしてみてはいかがでしょうか。自分に合ったボランティア活動を見つけるのはそんなに難しいことではありません。地方自治体にはボランティアセンターなどがあります。無理をしないでやれる仕事を探しましょう。
 知人や友人に、防犯パトロール、小学生の下校見守り、介護施設のお手伝いや慰問、手品、子供への読み聞かせ、スポーツコーチ、健康マージャンの指導、地域の清掃やごみ拾いなどをしている人がいます。どなたもボランティアを楽しんでやっておられます。

(6)家族を大切にしよう
 家族への思い、家族の大切さはいくつになっても変わりません。
 変わるのは家族構成です。夫や妻を亡くす人は年齢が高くなれば当然多くなります。息子や娘は自分たちの仕事や子供の教育などで一生懸命です。孫たちも大きくなり、自分たちの道を歩み始めます。できるだけ子供や孫たちに迷惑をかけないようしたいものです。
 二人暮らしの場合は、妻や夫の大切さが一層身にしみて感じられるようになります。二人とも健康なときも、どちらかが介護したり介護されたりのときも、お互いが大切になってきます。
 子供や孫たちともコミュニケーションをとりあいましょう。コミュニケーションがよければ、消して「振り込め詐欺の被害」に遭うことはありません。

(7)人とのつながりを保ちながら一人暮らしを楽しもう
 人生の最後は病気との闘い、孤独との戦いになります。家族と同居しているときは別ですが、二人暮らしで連れ合いに先立たれた場合、一人暮らしとなってしまいます。
 一人になっても引きこもりは避けて、出来るだけ人とのつながりを持つようにしましょう。家族といい関係を保ち、他人と積極的に交流をして一人暮らしを楽しみましょう。ご近所との付き合い、同好会、友人との旅行などいくらでもやれることはあります。携帯、パソコン、デジカメなどに親しむこともいいでしょう。

(8)身辺の整理をしよう
 突然死でいなくなったとき、家族は遺品の整理に頭を悩ませます。自分にとっては不要のものも、残された家族は簡単には捨てられないことが多いと聞きます。
 衣類、置物、趣味の道具や作品、書類や資料、写真やアルバム、持ち物など、不要な物は思い切って処分しましょう。家財道具や食器なども使わないものは捨てたほうがいいでしょう。

(9)いざという時、万一の時の準備をしておこう
 不要なものを処分すると同時に、自分が万一の時のために、預金通帳など大切なものの保管場所を家族に教えておくことも大切です。一人暮らしの知人が急死して、遺族が預金通帳を探しあぐねたことがありました。
 いろいろな会やカードなどに入っている場合はその種類と連絡先を書き遺しておきましょう。退会しないと自動的に会費を差し引かれるかもしれません。
 また、万一の時に知らせてほしい人の連絡先もわかるようにしておきましょう。

(10)車の運転をやめるタイミングを考えよう
 歳とともに判断力が鈍り、体の動きが悪くなります。いつかは車の運転をやめる必要が出てきます。車が好きな人にとって運転をやめるのはつらいことです。
 しかしタイミングを見て思い切って免許証を返上しましょう。とでもない事故を起こしてからは遅いのです。

(11)地域の施設やサービスを調べておこう
 自分や配偶者の介護が必要になる時のために、利用できる介護施設やサービスを調べておくといいでしょう。
 介護保険制度が実施された後、介護施設や介護サービスの種類が増えました。そのため、入ったあとで、考えていたものとちょっと違うと感じることもあるようです。事前に調べておくことが大切です。
 介護施設、介護サービスを使わないですめばそれにこしたことはありませんが、必要になったときは、うまく使うことを考えましょう。

(12)そして一日一日を大切に生きよう
 残り少ない人生なら一日一日が大切になってきます。
 明るく楽しく前向きに、シンプルな生活、エコな生活をしましょう。そうすれば毎日の生活のリズムが生まれてきます。そのためにも日記をつけておくことをお勧めします。
 そしてやりたいことがあれば先に延ばさずすぐ実行したいものです。

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