手賀沼通信182号で「老後をどう生きるか ひとつの選択」に対するご意見を載せさせていただきました。
 そのご意見の中に、「自然さんの文中に私が書いたエッセーの題が2か所ありました。『これでいいのか』『思えば遠くへきたもんだ』」とあり、エッセー2編を送ってくださった方がおられました。寺井健二様です。ありがとうございました。
 ページ数の関係で182号には載せられませんでした。改めて今月号でご紹介いたします。

 そのあとアルコール飲料のお話第4弾として、清酒、泡盛、ビール、に次いで焼酎を取り上げます。

特別寄稿
これでいいのだ             寺井健二
(平成20年10月15日)

 言葉漁りを趣味として、日々過ごしている。記録することが楽しいので、手帳の多くのスペースが色々な言葉で埋めつくされている。いい言葉との出会いは、人生を豊かにしてくれると勝手に信じて疑わない私である。そして今「これでいいのだ」が私を直撃した。
 発案者は、赤塚不二夫氏。人気漫画家である。同氏のヒット作『天才バカボン』の中に登場するセリフがこれ。麻生首相ほどマンガに親しんでいないので、どんな場面で使われているのか、調べないままに、わたしの頭の中に「これでいいのだ」だけが一人歩きを始めた。
 マンガの内容はさておき、「これでいいのだ」のセリフが、私の心を離さない。大袈裟に言えば、人生哲学がこの7文字に凝縮している。事物の営みを厳密に考える人は、その言葉の持つ、いい加減性と、ちょっと無責任のニュアンスには、拒否反応を示すだろう。が、「これでいいのだ」は人生を普通に生きている人々を元気づけたり、負け組(この言い方は好きではないが)の心を癒やしてくれる優しい呼びかけであったりする。難局に遭遇して困惑している人の心を軽くする効用もある。難しい言葉を使った屁理屈よりも、高遠な哲学に溢れているのではないかとさえ、思えてくる。
 似たような感じの言葉を二つ紹介したい。「まあいい」(武者小路実篤の詩)、そして「レット・イット・ビー」(ビートルズ、同名の曲)。少々解説を加えたい。一つ目は、『よみうり寸評』(読売夕刊6月20日掲載)から拝借。「まあいい」と考えると、失意に沈む人の心を軽くすると紹介されている。二つ目はビートルズ最期のリリース曲の題名。直訳してみると「あるがままにあらしめよう」だが、歌詞の日本語訳をした山本安見さんの「全てなすがままに」の名訳が、わかりよい。これは、私流の解釈だが、「他力」の西洋版。ともに何かのメッセージを提示しており、作者の意図は十分伝わってくる。
 一方、「これでいいのだ」は「結果は全て受け容れる」という、覚悟の言葉とも取れ、単なる諦めとも違う積極的響きを感ずるのだが、どう思われるであろうか。
 さて、今年喜寿を迎えた私は、今を生かされていることに感謝する日々である。季節の花を愛で、室内ゲームにうつつをぬかし、地域の小さなボランティアをやり、たまに旅に出る。これ以上高みを望むのは、贅沢だし、身体にも良くない。「これでいいのだ」のような私流言葉漁りはこれからも続きそうだ。

特別寄稿
思えば遠くへ来たもんだ             寺井健二
(平成24年10月20日)

 まだまだ元気と強がっていても、今の私はライフサイクルで言えば、フェードアウト(徐々に消えてゆく)さしずめ、交響曲ならば第4楽章あたりを彷徨っている状態。四住期説に従えば、林住期から遊行期に至るところ。とにかく、ここまで生をいただいた幸運に感謝するばかりである。

 声を出すこと、体を動かすこと、外とのコミュニケーションが出来る場を持つことなどが、心身の健康には効果があると自分なりに勝手に決め付け、励んでいる。一方、家の中では相も変わらず言葉漁りの趣味に精を出すほかに、バッハのイージーリスニング゙や、NHKラジオの「明日への言葉」「健康ライフ」「ビジネス展望」などを、数独をやりながら楽しんでいる日々である。聴くのは専ら録音再生したものだが、ラジオの音声の方がテレビのそれよりも数倍印象に残ることを実感している。

 最近は世界中でツイッターが流行しているが、今静かに「ひとりツイッター」を試みている。全く自分だけの言いたいことを並べて、何処にも発信をしない代物である。以下最近の数例を:
○ 和歌・俳句・川柳・都都逸・・・日本の言葉文化はツイッターそのものだ。
○ “垢抜け”(日経朝刊の小説より見出した)は質のよいほめ言葉。ほめ言葉の充実は世界を明るくさせる。
○ 大局観はどうすれば養われるのだろうか? QCやQAではどうも養われないようだ。
 家電敗退の一因もこんなところにあるのではないか?
○ 老いのサインがじわじわと随所に現れてきた。“歩行も食事も万事にスロー”“乗り物で物欲しげに空席をさがす”“カタカナが飛び交う文章が理解不能となってきた”・・・
 終活を今すぐに始めよ!(自分に対する号令)
○ 性善説が裏切られ,性悪説が跋扈する世の中。日本人には今の世の中は住みづらい。
 グローバル競争に勝つには、まず疑うことから始められる資質を持つことか、嗚呼。

 昨年傘寿を迎えたと思ったら、瞬く間にさらに一年が過ぎてしまった。文字どおり「思えば遠くへ来たもんだ」を口ずさんでしまう。今更持ち時間の少なさを嘆いていても仕方がない。少しずつでも、四季の変化を楽しむと共に、自然に社会貢献ができるような生活を送ることを自分に言い聞かせている。

焼酎物語

 私が一番よく飲むのは、ビール(発泡酒や第3のビールを含む)と焼酎(乙類)です。
 暑い時はビールに始まって焼酎のオンザロックか水割り、寒い時もビールに始まって焼酎のお湯割りが晩酌の定番となっています。
 清酒も好きですが、おいしくて飲みすぎるため焼酎にしています。
 妻は焼酎の変わり種の泡盛をよく飲んでいます。

1.面白い区分−甲類と乙類
 焼酎は蒸留の方式で甲類と乙類に分けています。数字やアルファベットで区分するのが一般的ですが、戦前に使われた分類方式の甲、乙を使っているのは焼酎くらいでしょう。
 甲類は連続式で蒸留するため、ピュアで癖のない味わいになります。19世紀末に作り始められたため、「新式焼酎」と言われていました。ホワイトリカーとなっているものもあります。癖がないため、酎ハイ、サワー、果実酒、カクテル、薬用酒など多様な楽しみ方、使われ方があります。
 私は飲み会などで甲類焼酎のウーロン割りをよく飲みます。
 乙類は単式蒸留で作られ、本格焼酎とも言われます。原料の特徴や風味を残しており、人によって好き嫌いの分かれるところですが、焼酎の奥深さを味わえるのは乙類です。お湯割り、オンザロック、水割りは絶対乙類という人が多いのはそのためでしょう。
 私は乙類焼酎のお湯割りとオンザロックの愛好者です。
 スーパーなどでは、紙パックに入った甲類と乙類の混和焼酎が売られています。価格の安い甲類を混ぜることによって、値段を下げるためではないかと思います。大きくいも焼酎とか麦焼酎とか書かれていますが、本格焼酎の文字はありません。その代り、混和率が印刷されています。

2.多様な本格焼酎
 本格焼酎の製法は琉球(沖縄)から薩摩(鹿児島)に伝わりました。その後は南九州から九州以外にも伝わりました。
 沖縄の泡盛の醸造には黒麹菌が使われますが、九州をはじめとする各県では白麹菌が使われています。
 本格焼酎の原料は多種多様です。しかも醸造されるところは強い地方色を持っています。
 原料の違いによる焼酎の種類とその主産地は以下のようになっています。

 甲類焼酎の原料は大麦やコーンなどから作られた糖蜜です。乙類焼酎と比べると安く醸造することができます。

 代表的な本格焼酎のそば焼酎、麦焼酎、いも焼酎、米焼酎を、この順番で多く飲んでいますが、私の飲んだ感じをまとめてみましょう。
・そば焼酎
 4つの中で一番軽い味で癖がなく飲みやす感じです。ただそばだけで醸造するのは難しいため、米や麦などが入っていることが多いようです。私の飲んでいるそば焼酎には、麦と米麹が入っています。
・麦焼酎
 麦焼酎も癖がなく飲みやすいです。麦焼酎は大分県でイオン交換樹脂法を技術を使った麦焼酎が発売されるようになってから大きく伸びました。「下町のナポレオン」として売り出された「いいちこ」や「二階堂」などが代表的な大分麦焼酎です。
・米焼酎
 熊本県の人吉地方が代表的な生産地です。香りや味わいは日本酒に近くフルーティで、焼酎をあまり親しまない人にもなじみやすい焼酎です。
・いも焼酎
 昔から焼酎といえばいも焼酎でした。さつまいもを原料とし、独特の香りと風味があります。その香りというか臭みが人によって好き嫌いがあるといわれています。しかし高級ないも焼酎はフルーティで飲みやすくなっているものもあります。

3.本格焼酎のランキング
 インターネットで焼酎の人気銘柄ランキングを調べてみました。
 いも焼酎、麦焼酎、米焼酎別に、4つのウェブサイトからベスト10を書きだし、1位〜10位までに、10点〜1点を配して合計得点で人気銘柄を5位まで選びました。
 この順位は人気の順位ですので、必ずしも多く飲まれている順ではありません。なかなか手に入らないため高い順位を得ている銘柄もあります。

いも焼酎
@森伊蔵   鹿児島県
A魔王    鹿児島県
B富之宝山  鹿児島県
C佐藤    鹿児島県
D村尾    鹿児島県
 いも焼酎はさすが本場の鹿児島県の独壇場です。
森伊蔵は入手困難なためネットオークションで定価の何倍もの値がついたことがあります。

麦焼酎
@百年の孤独 宮崎県
A中中    宮崎県
B兼八    大分県
C神の河   鹿児島県
D千年の眠り 福岡県
 イオン交換樹脂法で作られた大分麦焼酎はブームを起こしましたが、最近の本格焼酎人気のもとでは、常温・低濾過の麦焼酎に嗜好が移ってきているようです。ベスト5も九州の4県に広がっています。

米焼酎
@鳥飼    熊本県
A十四代   山形県
B白岳    熊本県
B豊永蔵   熊本県
D天草    熊本県
 熊本県の牙城に山形県の十四代が食い込んでいます。十四代は山形県の地酒日本代の酒造メーカー高木酒造が造った焼酎です。ごくわずかしか作られていません。

4.焼酎の消費量(生産量)
 最初の表からは2005年に焼酎の消費量が、清酒の消費量を追い越したのが分かります。
 2番目の表では平成19年までは麦焼酎の生産量が多かったが、それ以後は麦といもがほぼ拮抗していることを示しています。
 3番目の表では焼酎の1人当たりの消費量は九州と寒冷地が多く、九州は乙類、寒冷地は甲類と嗜好が分かれていることが分かります。

5.焼酎の製造法
 本格焼酎の製造過程は次の通りです。
@麹作り
工事の原料となる米または麦に白麹菌(一部黄麹菌が使われることもある)を加え麹を造ります。
A一次もろみ造り
麹に水と培養酵母を加えて仕込みをし、一次もろみを造ります。
B二次もろみ造り
一次もろみに主原料となるいもや麦や米などと水を加えて糖化と発酵を行い二次もろみを造ります。
C蒸留
 単式蒸留機で蒸留します。
D熟成
3段階に分けて熟成させます。

参考資料:ブルーバックス「酒の科学」野尾正昭 
    「日本蒸留酒酒造組合」のホームページ
    「Wikipedia」のホームページ
    「焼酎ランキング関係」のホームページ
    「国税庁」のホームページ

inserted by FC2 system