今月はアルコール編の最後として、「中国のお酒」「韓国のお酒」「その他のお酒」をお送りいたします。お酒をたしなまれない方には、7回にわたり面白くもない話にお付き合いいただき申し訳ありませんでした。
 手賀沼通信はネタ探しに苦労しています。皆様のご投稿をお待ち申し上げております。

中国のお酒

1.中国旅行のお酒の思い出

 中国には過去3回観光旅行に行きました。私の観光旅行にはお酒と現地の料理を楽しむことが大きな目的を占めています。
 最初の旅行は1999年北京、西安、上海へのツアーに1人で参加しました。その時飲んだのは、サントリーやアサヒなどの日本銘柄で中国の工場で作られたビールがほとんどでした。北京のレストランでは大瓶1本が90円や150円、上海ではやや高くて225円と当時の手賀沼通信に書いています。紹興酒も飲みましたが、白酒は飲みませんでした。北京はおそらく白酒の方がよく飲まれていると思いますが、当時の私は白酒にはなじみがなかったためです。西安は白酒の世界で、スーパーでは紹興酒はお酒売り場でなく、料理酒の売り場に置いてありました。おそらく西安では現地の人は紹興酒は飲まず、料理に使っていたのでしょう。1瓶195円でした。
 2度目の旅行は2002年蘇州と上海への旅行でした。元の会社の同僚が蘇州大学で日本語を教えていたので、元の同じ営業所の仲間で同僚のところへ訪ねて行ったのです。蘇州と上海は紹興に近いだけあって、紹興酒の世界でした。ここでは毎晩のようにビールと紹興酒をいただきました。
 3度目は2011年に蘇州に一緒に行った仲間が蘇州大学の先生の後を継いで蘭州大学で日本語の先生をしていたので、やはり元の営業所の仲間で、蘭州から西寧、敦煌へ行きました。これらの3都市はシルクロードの要衝の地です。飲んだお酒はビールと白酒でした。紹興酒はレストランのメニューにはなかったと思います。酒店で白酒を買ってきては、仲間の部屋で酒盛りをしました。
 中国は領土が広大なのと少数民族が多いため地方によって食文化が違っています。北部や中部は水田がなく米が取れません。そのためこの地方では小麦や麺が中心の世界です。ところが中国の南部は河川や湖が多く米が豊富に取れます。こちらは米やご飯の世界です。お酒も北部や中部は白酒、南部は黄酒(紹興酒は黄酒の1種)でした。ちなみに交通手段も昔は南船北馬と言われて、北は砂漠が多いため馬が使われ、南は河川が縦横に走っているため船が移動の手段でした。

2.北部・中部のお酒−白酒
 白酒(パイチュウ)は麦、高粱、黍、粟、豆などを原料とする蒸留酒です。白酒と言っても色は白色でなく、無色透明です。日本では蒸留酒は九州や沖縄など南部に多い酒ですが、中国では北部、中部に多く東北(旧満州)、河北、山西、陝西、などの各地、四川、雲南、貴州などの高地・畑作地で作られています。
 白酒は白乾児(パイカル)とも言われ、山西の汾酒、陝西の西鳳酒、貴州の茅台酒などが有名です。日中国交再開のパーティで、田中角栄首相が周恩来首相と茅台酒で乾杯したのが記憶に残っています。
 白酒のアルコール度は40〜60%くらいのもが普通で、日本の焼酎より熟成期間の長いものが多いようです。
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 白酒は黄酒に比べると歴史が浅く、6世紀の北斎の時代に書かれた「北斎書」に汾酒についての記述があります。
 残念ながら日本のスーパーや酒屋で売っている中国の酒はほとんどが紹興酒です。白酒は日本人にはあまりなじみがないのでしょう。白酒を手に入れるにはインターネットが便利です。ちなみに楽天市場で茅台酒を調べたら税込1本13,499円でお一人3本まででしたが、売り切れましたの表示がありました。
 白酒に中国伝統の漢方薬を加えると薬種(葯酒ヤオチュウ)となります。加えるのは草根木皮、果実、蛇、トカゲ、鹿角、虎骨、犀角、などで、「不老長寿」「百薬の長」「補精強陽」を目指した薬酒です。

3.南部・海浜部のお酒−黄酒
 黄酒はもち米を原料とする醸造酒です。アルコール度は14〜18度くらいです。紹興酒は浙江省紹興市付近で製造される代表的な黄酒です。 紹興酒には製法の違いによって、元紅酒、 加飯酒、善醸酒、香雪酒の4種類があり、この順にドライ(ブドウ糖が少ない)です。
 老酒は黄酒を長期熟成させたものです。紹興酒という呼び方が一般的になる前は、日本では老酒と呼ばれていました。温めて砂糖の塊を入れて飲んでいました。今では紹興酒はそのまま飲むことが多いようです。
 白酒に対し、数千年の歴史と伝統を誇る中国固有の酒は黄酒と言えます。酒を詠んだ著名な詩人、陶淵明、李白、白楽天などが賞味した酒は黄酒でした。
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 中国では、女児が生まれると両親は黄酒を仕込み、美しい形と飾りを施した甕に入れて地中に埋め、その子が成人して嫁ぐとき、老酒になっているその黄酒を掘り出し、嫁ぎ先へのお土産として持たせる風習があるといいます。現代にもその風習が残っているかどうか知りませんが、市販酒にも、これにうってつけの「女児紅」が高級酒として売り出されています。
 以前いた会社の退職者の会にABC会があり、神保町の「新世紀販店」で新年会を行います。その際は紹興酒の鏡開き(というかどうか知りませんが)を行います。紹興酒の入った甕のふたの石膏を木づちで割り、石膏を取り除いた後、何枚かの蓮の葉をはがすとカラメル色の紹興酒が姿を現します。上澄み、中澄み、下澄みのお酒を別々の容器にくみ取っていただきます。それぞれ味わいが違うということを初めて知りました。

韓国のお酒

1.韓国のお酒の思い出
 私が最初に韓国に行ったのは今から45年前の1969年です。32歳のときで初めての海外出張でした。
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韓国アイビーエムが三星グループ(今のサムソングループ)の保険会社にコンピュータを売るお手伝いに行ったのです。
 当時の韓国の大統領は今の朴大統領のお父さん、朴正熙でした。夜の12時から朝の4時までは外出禁止で、遅くまで外で飲んでいると帰りのタクシーは奪い合いとなったのを覚えています。
 そのとき飲んだのは韓国製のOBビールと日本の清酒に近いお酒でした。
 今のむ韓国のお酒はマッコリとJINROです。どちらも最近になってからですが、マッコリはいつも我が家の冷蔵庫に入っています。JINROは外で仲間と飲むときウーロンハイなどにして飲んでいます。

1.マッコリ
 マッコリはもち米や麦、小麦粉などを蒸して麹と水を混ぜて発酵させた韓国固有の酒で、白く濁りアルコール度数が6〜7度と比較的低いのが特徴です。白く濁っているため「濁酒」、あるいは農事を行いながら飲んだため「農酒」などと呼ばれています。
 韓国では米を原料にした「酒マッコリ」、ろ過せず米粒がそのまま浮かんでいる「ドンドンジュ」などが人気があります。マッコリを飲む際はよく振ったり混ぜたりして飲む方がよく、よいマッコリは甘みや酸味、苦味、渋みがほどよく調和しています。

2.清酒
 清酒は濁酒に比べて「清い酒」という意味をもっています。濁酒とほぼ同じ方法で作られますが、酒をろ過する過程で濁酒と区別されます。米を主原料に麹と水を酒甕に入れ、摂氏20−25度程度の場所で10−20日程度発酵させます。酒が発酵すると、酒甕の真ん中に竹で作った円筒形の用水(酒をろ過する用具)をはめ込み、その中に清い酒が溜まるようにします。これをすくったものが清酒です。

3.焼酎
 焼酎は米や他の穀類を原料にして発酵させ、熟成したものを蒸留した酒です。蒸留する際の火加減によって味や質、量が異なってきます 。焼酎は一度つくった酒を再び蒸留するためアルコール含有量が高いのが特徴です。
 韓国で焼酎は最も大衆的な酒です。無形文化財に指定された地域の伝統酒は一般の酒屋ではあまり見られず多少高いですが、酒屋で最も多く販売される焼酎は小さい瓶(360ml)に入っており、ブランドも多様です。焼酎は全体の酒消費量の尺度となるくらい大衆的な酒であるため、ブランドごとの競争も熾烈です。

その他のお酒

 お酒の種類はいくつあるか分かりません。国や民族が異なるごとにあるのかもしれません。
 その中で飲んだことがあるものや、テレビなどによく出てくるお酒や、知人から紹介されたもののいくつかをランダムに書いてみます。

1.ウォッカ−ロシア
 ウォッカといえばロシアと結びつきますが、ロシアやウクライナなどの東欧、フィンランドやノルウェーなどの北欧、ポーランドやスロヴァキアなどの中欧でも作られています。
 大麦、小麦、ライ麦、ジャガイモなど穀物を原材料とした蒸留酒です。蒸留後白樺の炭で濾過します。このため、一般に無味無臭無色です。
 アルコールの度数は95%以上あるものもあり、日本では通常カクテルのベースとして飲まれているようです。オレンジジュースと混ぜたスクリュードライバーが有名です。

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2.ラク−トルコ
 ラクはトルコの蒸留酒で、ぶどうを原料とし、アニスで香りがつけられます。トルコに行った時初めて飲みました。かなりユニークな味で、ほかのお酒で似ているものは知りません。飲みつけるとはまってしまう人もいるようです。
 アルコール度数は45〜50%、無色透明ですが水を加えると白く濁ります。
 お土産に買ってきましたが、息子や娘たちには不評でした。

3.リモンチェッロ−イタリア
 イタリアのカプリ島に行った時初めて飲みました。大変おいしく、お土産に買ってきました。その後ネットで取り寄せ、今も1本冷蔵庫に入っています。
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 イタリアのカンパーニア州のナポリ湾周辺のカプリ島、ソレント半島、アマルフィ海岸の一帯が産地として有名です。糖度の高い果実酒です。レモンの果皮をアルコール度数の高い蒸留酒に一定期間漬けた後取り出し、砂糖水を加えて1週間〜1ヶ月ほど置く製法が一般的です。
 元々はソレントを中心とした地域で、各家庭ごとに庭で育てたレモンを使って作られ愛飲されてきた食後酒でしたが、バカンスで訪れる観光客によってイタリア全土からヨーロッパに広められ、現在では世界的に知られるイタリアの名産品のひとつとなりました。レモンの香りがし、甘味もあるので口当たりは良いですが、アルコール度数は30%以上あります。冷蔵庫や冷凍庫(凍結はしません)などでよく冷やし、食後酒としてストレートで飲むのが一般的な飲み方ですが、炭酸水で割って飲む方法もあります。

4.テキーラ−メキシコ
テキーラとは、メキシコ国内のハリスコ州とその周辺で、アガベ・テキラーナ・ウェーバー・ブルーと呼ばれる竜舌蘭から造られる蒸留酒です。
メキシコ産であることから、サボテンが原料と誤解されることがあるようですが、竜舌蘭とサボテンは異なる植物です。
ウイスキーのようにそのまま飲まれるほか、カクテル等の材料にも使われます。
 テキーラというお酒があることは学生時代から知っていましたが、まだ味わったことはありません。

5.馬乳酒−モンゴル
 モンゴルの草原やシルクロードなどが登場するテレビ番組や書物などで、客人を馬乳酒でもてなす場面がよくあります。私は飲んだことはありませんが、ネットで調べてみました。
 馬乳酒とは、馬乳を原料として主にモンゴルなどウマ飼育が盛んな地域で作られ、主に同地域で飲まれているアルコール分を含んだ乳製品の1種で、醸造酒の1種と考えることもできます。発酵と同時に乳酸菌による乳糖の乳酸発酵も進行するため、強い酸味があります。

6.ピンガ−ブラジル
 手賀沼通信読者のお一人から次のようなメールをいただきました。
「ピンガ(サトウキビ酒)のこと 
 ブラジルのバールで、談笑しながら飲む『カイ・ピリーニア』(ライムを潰し氷とかき混ぜ、ピンガを注いだカクテル)は、爽快。サンバのリズムに耳を傾けながら飲むピンガは、最高に美味い。ピンガは、サトウキビの搾り汁を濁ったまま発酵・蒸留させたブラジルの国民酒。加水しないので、アルコール度が40度もある。飲み心地が良いので、飲みすぎると腰にくる。要注意。カシャーサ51の銘柄が一番よく飲まれる。ミネラル ウオーターの値段と違わないほど安い。日本の専門店でも、1本700円程度で販売。30代に、家族と過ごした駐在生活が懐かしい。当時の現地社員のひとりひとりが、透き通るグラスに浮かぶ。」
 ブラジルに行ったことがないので私は飲んだことがありませんが、一度味わってみたいですね。

参考資料:ブルーバックス「酒の科学」野尾正昭 講談社
                「Wikipedia」のホームページ
                「韓国観光公社公式サイト」

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