先月までアルコールシリーズにお付き合いくださりありがとうございました。
 今年は食べ物のシリーズを書いてみようと思っています。年齢とともに勉強することが少なくなり、難しいことを書けなくなってきています。体調は悪いところだらけですが、幸いなことに食欲だけはあまり衰えていないので、食べ物にこだわっていきたいと思います。食べ物は種類も多く、食材や料理法など、いろいろな角度でとらえることができます。
 まずは食材から、その第一弾はくだもの、それもみかんをはじめとするかんきつ類とメロンについて書いてみようと思います。

かんきつ類物語

 私のふるさと愛媛県はみかんや伊予かんなどかんきつ類では、種類、生産量とも日本一です。
 私は昭和12年生まれですが、子供のころ果物といえばまずはみかんでした。今でも黄色になりきらない緑のみかんが出始めるころの待ち遠しい記憶が残っています。
 みかんの後は伊予みかん、暖かくなると夏みかんやはっさくをいただきました。今でこそ新しい品種が次々に開発されますが、当時は料理や香りづけに使うかんきつ類は別にして、普段果物として食べるかんきつ類は、その4種類が記憶に残っています。
 かんきつ類は皮を手でむくことができるので、大変食べやすい果物です。特にかんきつ類の中の温州ミカンは、皮がむきやすい上に大きさも手ごろで、香りや味が親しみやすいため、日本で一番作付面積の多い果物となっています。

1.かんきつ類の種類
 今どれくらいのかんきつ類があるのでしょうか。
 温州みかんを除くかんきつ類は中晩柑と呼ばれています。ネットで「特産果樹生産動態等調査」(農林水産省)を見つけました。
 これによると、全国では83種の中晩柑が作られているようです。
 主な中晩柑には次のようなものがあります。

伊予かん
 中晩柑の中では生産量第一です。伊予かんと言われるだけあって、愛媛県での生産量が最も多くなっています。
 出荷時期は1月上旬から3月下旬までですが、2月上旬以降が食べごろです。形は温州みかんより大きく、甘さとさわやかな香りとジューシーな味わいが特徴です。
 伊予かんは1886年に山口県で発見されました。「普通いよかん」と言われました。みかんとオレンジの交雑種とか、みかんとぶんたんの交雑種とも言われますが、正確な起源は不明です。
 1955年愛媛県の宮内氏の農園で発見された「普通いよかん」の枝変わり品種「宮内伊予かん」が伊予かんの代表的品種となりました。

不知火(デコポン)
 デコポンは熊本県果実農協の登録商標で、一般的な品種名は「不知火(しらぬひ)」です。
 個性的な外見で一目で分かります。ハウス栽培も含めて12月上旬から5月上旬まで食べられます。甘見が強く袋ごと食べられるため人気があります。
 熊本県が最大の産地で、愛媛県がそれに次ぎます。
 長崎県の農林水産省果樹試験場で1972年に「清見」と「中野3号ポンカン」を掛け合わせて作られました。当初は外見上の見栄えが悪いなどの事情で品種登録はされませんでした。
 その後熊本県不知火町で栽培される様になって人気商品になり、全国に普及することになりました。
 同じ物が韓国済州島にわたって、「ハルラポン」という名前で生産されています。

清見
 「不知火」の親の清見も、温州みかんとアメリカ生まれのオレンジの交配で生まれたものです。1949年静岡県農林水産省果樹試験場で生まれ、近くの静岡県清見潟の清見寺にちなんで「清見」と名付けられました。
 出荷時期は3月上旬から5月下旬までで、愛媛県が日本一の産地です。
 あふれる果汁と香りが特徴で、果肉が軟らかいためややむきにくいところがあります。
 袋ごと食べられ、種はほとんどありません。

ポンカン
 インドが原産地で日本には明治時代に伝わりました。1896年(明治29年)台湾総督府より鹿児島県に苗木がもたらされたのが最初と言われています。
 1月上旬から3月上旬まで出回ります。酸味が弱く甘みが強く、皮はむきやすく、袋ごと食べられます。果肉は柔らかくて果汁も多く、香りのよい柑橘です。
 愛媛県が日本一の産地です。

河内晩柑
 大正時代に熊本県河内町の西村徳三郎氏の庭で発見されたためこの名前となりました。文旦(ブンタン)の血をひいているようです。
 果皮が黄色くなめらかで、果肉は多汁でやわらか、香りはさわやかで、ソフトな口当たりです。風味と外観がグレープフルーツに似ているところから、「和製グレープフルーツ」とも言われますが、グレープフルーツの様な苦みや酸味はありません。
 地域によって「美生柑」「宇和ゴールド」「ジューシーフルーツ」「ナダオレンジ」などと呼ばれます。愛媛県が63%のシェアを占めています。

せとか
 「せとか」は「清見」×「アンコール」の交雑種に、「マーコット」を交配して誕生した品種です。農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所が育成し、2001年(平成13年)に品種登録されました。
 果皮は少し濃いめの橙色で、糖度が高くてやさしい酸味があり、濃厚で優れた風味を持ちます。果肉はやわらかく果汁が豊富で、袋ごと食べられます。
 「せとか」という名前は、育成地である長崎県南島原市口之津町から望める海峡「早崎瀬戸」の「せと」と、香りがよいこと、そして瀬戸内地域での栽培が期待されることが由来だそうです。
 愛媛県が約68%のシェアを持っています。

はるみ
 「はるみ」は「清見」と「ポンカン(F−2432)」の交雑種で、農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所の興津支場で育成されました。品種登録されたのは1999年です。
 糖度が高くて適度な酸味があり、果汁も多めで香りも豊か。果肉のつぶつぶにハリがあり、プリプリとした食感で深みのある味わいです。袋ごと食べられます。1月頃から店頭に並びます。
 「はるみ」の名前は、「初春」に店頭に並ぶことと、「清見」の血を引いていることが由来です。ちなみに「デコポン(不知火)」も両親が「清見」と「ポンカン(中野3号)」で、「はるみ」とは姉妹のような関係になります。
 愛媛県が約30%のシェアでトップです。

 その他主な品目には、はるか、はれひめ、まりひめ、なつみ、カラ(カラマンダリン)、アンコール、マーゴットなど多くの種類があります。

2.かんきつ類と地方の結びつき
 かんきつ類と地方の結びつきを思いつくままに取り上げてみましょう。これはあくまで私のこだわりで、深い意味はありません。

ザボンと長崎県
 私の子供の頃、「長崎のザボン売り」という歌がはやりました。ネットで調べてみると、小畑実が1948年にレコードを出しています。
 この唄が今でも心に残っていて、ザボンと言うと長崎県の名産と思っていました。
 ところがこれもネットで調べると、ザボンは文旦(ブンタン)のことで、土佐文旦が有名で、主な産地は高知県90%、鹿児島県5%、愛媛県3%となっていました。
 長崎との結びつきは、江戸時代に難破した外国の船員が文旦のたねを持っていて、それが長崎から日本に入ってきたことのようです。

夏ミカンと山口県
 5年ほど前、ツアーで山口県に行った時、バスガイドが、「山口県のガードレールがだいだい色なのは、夏ミカンが県の特産なのでその色にした」と言っていたのを覚えています。
 夏ミカンは山口県の萩市で多く栽培されています。酸味が強いので、今ではあまり食べられていません。今では甘夏がその地位を奪ったようです。

小夏と高知県
 初めて食べたのは数年前、妻が直接高知県の業者から取り寄せたからです。それまでは全く知りませんでした。
 小夏は果皮が黄色くなめらかで、サイズは小粒、白いワタ(アルベド)が厚く、果肉はみずみずしくさわやかな香りと甘酸っぱさが楽しめます。白いワタは苦味がなくふわふわとしてほんのり甘みがあり、果肉と一緒に食べるのが一般的です。
 商品名は地域によって異なり、宮崎県産は「日向夏」、高知県産のものは「小夏」、静岡県や愛媛県では「ニューサマーオレンジ」と呼ばれることが多いです。
 高知県は宮崎県に次ぐ産地となっています。

スダチと徳島県
 スダチはその98%が徳島県で生産されていて、徳島県の名産品というより独占品と言えます。
 昨年夏、阿波おどりを見に行った時、お土産店の一番の売り物はスダチ関連の商品でした。スダチは料理の香りづけに持ってこい、小さいので一度に使いきることができ、レモンより使いやすいと感じています。

参考資料:
「愛媛県 かんきつ情報館」のホームページ
「果物情報サイト 果物ナビ」のホームページ
「Wikipedia」のホームページ

メロン物語

 メロンという言葉から連想されるのは、高級とか、贈答品とか、新しい果物などではないでしょうか。たしかに、マスクメロンや夕張メロンなどはそれに当てはまるかもしれません。
 日本で温室メロンが栽培され始めたのは大正時代からですが、メロンの仲間のマクワウリは弥生時代には栽培されていたようです。なぜなら、日本各地の遺跡から、土器とともにマクワウリの種が見つかっているからです。

 ヨーロッパにおけるメロンの歴史は古く、古代エジプトや古代ギリシャにおいてメロンの仲間が栽培されていたことが分かっています。しかし、メロンは暖かい地方でしか栽培できなかったため、気候のそぐわない北ヨーロッパ地域で栽培が行われるようになったのは14〜16世紀以降といわれています。

1.メロンの種類
メロンは果肉の色によって「赤肉系」、「青肉系」、「白肉系」に分けられます。赤肉は夕張メロンやクインシーメロンがよく知られていて、青肉ではアールスメロンやアンデスメロンなどが有名。また、白肉にはホームランメロンなどがあります。
 さらに、網の有無によって「ネット系」、「ノーネット系」にも分けられます。ネット系メロンは、成長過程で果肉が果皮よりも大きくなろうとして、その時に果皮がひび割れてしまいます。このひび割れをふさごうとしてできたコルク層がネットになるのです。一般的には、ネットの模様が均等であるほど良品とされ商品価値が高くなります。

マスクメロン(アールス)
 高級メロンの代名詞でもあるマスクメロンですが、実はマスクは品種名ではなく、麝香(じゃこう)の香りがする「musk」からきており、実際はアールス系メロンのことを指します。果肉は緑色、代表品種は「アールス・フェボリット」で、静岡県ではアールス・フェボリットの優秀なものを「クラウンメロン」として流通させています。

夕張メロン
 正式な品種名は「夕張キング」といい、親は「スパイシー・カンタロープ」×「アールス・フェボリット」で1961年に誕生しました。また「夕張メロン」という名前は夕張市農業協同組合の登録商標で、この農協から出荷されるものだけが夕張メロンの名称を使用できます。果肉はオレンジ色で甘みが強く、果汁も豊富です。ただ、日持ちはあまりよくありません。

アンデスメロン
 大きさは少し小ぶりで果皮に細かい網が入り、果肉は緑色でややかたく、味と香りはマスクメロンに似ています。価格がお手頃なことから人気が高く、ハウス栽培の主要品種となっています。親は「アールス系」×「不詳」。ちなみにアンデス山脈とは関係なく、発売当初(1977年)の「安心ですメロン」という名前の候補が由来です。

クインシーメロン
 果肉がきれいなオレンジ色のネット系赤肉メロンで、なめらかな口当たりと深みのある甘さが特徴。ジューシーで甘い香りがします。シーズンは5〜7月頃。平成に入ってから普及しました。

アムスメロン
 やや楕円形で果皮は濃い緑色をしていて、網目が荒く溝のような縦じまがあるのが特徴です。果肉は淡緑色で甘みがあり果汁も豊富。1974年(昭和49年)に発表されました。6月頃から出回ります。

プリンスメロン
 1962年に発表された「プリンスメロン」は、かつてはメロン市場のシェアNo.1を誇りましたが、1970年代以降に様々な品種が登場したことで生産高は減少しました。西洋種のメロンと「マクワウリ」を交配した品種で、果肉は緑からオレンジで甘みが強く、大きさはやや小ぶりです。

ホームランメロン
 皮は乳白色でネットがなくツルツルしています。また果肉も白く口当たりはなめらか。「ハニーデューメロン」と「緑肉種」を掛け合わせた品種で、主に熊本県や茨城県で栽培されています。出回り時期は3〜7月頃。

2.メロンの収穫量
 県別の収穫量です。 メロンの栽培法にはガラス温室、ビニールハウス、トンネル栽培、露地栽培がありますが、国内では多くの品種がハウス栽培とトンネル栽培で作られています。またガラス温室ではアールスメロン(マスクメロン)など高級メロンが栽培されています。北海道から鹿児島まで収穫できるのは、栽培法によるためです。

参考資料:
「果物情報サイト 果物ナビ」のホームページ
「Wikipedia」のホームページ

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