あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いいたします

 くだもの物語の3回目をお送りいたします。

 日本人が一番好きなくだものは何だと思われますか。
 NHKの放送文化研究所では、2007年に全国300地点、16歳以上の国民3600人を対象に調査を行いました。
 ベストテンは、イチゴ、ミカン、モモ、ナシ、リンゴ、ブドウ、メロン、スイカ、バナナ、サクランボの順番でした。次点はカキでした。
 最近朝日新聞が発表した日本人が好きなくだものベスト10は、イチゴ、モモ、メロン、ミカン、リンゴ、カキ、ナシ、スイカ、バナナ、ブドウでした。次点はサクランボでした。
 次点を入れると登場する顔触れは同じですが、順位は違っています。
 違わないのはいずれもイチゴがトップを占めていることです。日本人にとって、くだものの王様はイチゴなのですね。

 今回はそのイチゴとややマイナーなサクランボを取り上げてみましょう。

 どちらも参考文献として:
「果物情報サイト 果物ナビ」のホームページ
「Wikipedia」のホームページ
の「イチゴ」と「サクランボ」編を利用しております。

イチゴ物語

 イチゴで思い出すのは学生時代の下宿です。大学入学当初は予備校時代からの西武線富士見台の下宿から通っていたのですが、大学のある小平まで遠いため同じ松山南校出身の同級生が見つけた小平の下宿に移りました。翌年からは弟が加わり、3人でお世話になりました。
 毎年5月頃になると夕食の食卓にイチゴが加わりました。甘いクリームシロップがかかっていました。広い庭で下宿のおばさんとおばあさんがイチゴを栽培していたのです。
 今から60年近くも前なので、イチゴはほとんど露地栽培、ハウス物などはお目にかかれませんでした。今でこそ、イチゴは長い期間食べられますが、当時は露地栽培で実ったときだけしか口には入りませんでした。
 気のいいおばさんでしたので、惜しげもなく下宿生にも食べさせてくれたのです。

1.イチゴの歴史と激しいブランド競争
 イチゴは18世紀に北米のバージニア種と南米のチリ株がオランダで交配され栽培用イチゴが生まれました。日本には江戸時代末期にオランダから渡来、長崎のオランダ商館で栽培されました。その時は定着せず、本格的な栽培が始まったのは、明治32年頃にフランスの品種が入ってきてからで、大衆化したのは1960年代に米国産のダナーが登場してからです。
 1980年代には東では栃木の「女峰」、西では福岡の「とよのか」の2大品種時代が続きました。クリスマス出荷が本格化したのもこのころです。
 1996年には栃木の「とちおとめ」が登録され、「女峰」に替わりました。
 その後は各県の品種乱立時代となり、「さちのか」「さがほのか」「紅ほっぺ」などが生まれました。
 2005年には福岡が「あまおう」を登録、栃木の「とちおとめ」から高級イチゴの女王を奪っています。
 一方、栃木は2011年「スカイベリー」を登録、「とちおとめ」の後継として、「あまおう」から女王の座を奪回しよう努力しています。

2.イチゴの種類
 現在イチゴの登録品種は約160種ほどですが、その中から有名品種をいくつか選んでみましょう。イチゴは新品種開発が盛んな果物です。

とちおとめ
 文字通り栃木県生まれで、「久留米49号(とよのか)×(女峰)」と「栃の峰」の交配種です。平均15g前後と女峰より大きくて日持ちがよく、酸味が少なく甘みが強いのが特徴です。現在東日本のシェアナンバー1の品種です。

あまおう
「赤い、丸い、大きい、うまい」の頭文字から名付けられた「あまおう」は「とよのか」の後継種として福岡県で生まれました。親は「(とよのか)×(てるのか)」×「(久留米49号)×(さちのか)」です。糖度が高く適度な酸味とのバランスにもすぐれ、大きいものだと1粒40gにもなります。

スカイベリー
 栃木県農業試験場が「とちおとめ」の後継として開発しました。正式な品種名は「栃木i27号」で、「スカイベリー」は公募によってつけられたブランド名です。親は「00−24−1」×「栃木20号」です。円錐形で甘酸のバランスがよく、食味が優れサイズが大きいのが特徴です。2012年12月から出荷されている新しいイチゴです。

ひのしずく
 熊本県の特産で、親は「さちのか×栃の峰」×「久留米54号×栃の峰」で、2006年登録されました。平均果重は18g以上と大きめで、紅色の果皮はつやがあり、柔らかくみずみずしく甘みがあります。

紅ほっぺ
 粒が大きく鮮やかな紅色をしていて、果肉も赤くなるのが特徴。「章姫」×「さちのか」の交配種として静岡で誕生し2002年に登録されました。糖度が平均12〜13度と高く、たっぷりの甘みの中に適度な酸味が調和しています。

さちのか
 「とよのか」と「アイベリー」をかけあわせた品種で2000年に登録されました。サイズは10〜20gほどで、果皮は濃い赤、糖度が高くて香りのよいイチゴです。長崎県、佐賀県、千葉県など広く栽培され、全国の作付面積もトップクラスです。

さがほのか
 酸味が少なく甘みの強いイチゴで、「大錦」×「とよのか」の交配種として佐賀県で育成され、2001年に登録されました。果実は比較的大きめで香りがよく、中の果肉が白いのが特徴です。

3.イチゴの統計
 イチゴの各県別の収穫量は左の表のようになっています。
 イチゴについては収穫量の多い県は、各県別に独自のブランドを持つ場合が多くなっています。栃木県と福岡県の競争は熾烈ですが、消費者にとってはうれしい競争といえましょう。

4.イチゴの輸出入と韓国での日本製イチゴ新品種の無断栽培問題

 上の表はイチゴの輸出入の統計です。イチゴの輸出入はどちらも4カ国が相手先です。
 秋口になるとイチゴは露地栽培ものもハウス栽培ものも端境期となり、生食用のイチゴはほぼ全量輸入に頼っています。

 韓国からの輸入がアメリカに次いで多いのですが、Wikipediaに次のような記事が出ていました。

「2005年現在、韓国でのイチゴ生産は、日本で開発されたレッドパール、章姫などといった品種が大部分を占めている。これらの品種は植物新品種保護国際同盟(UPOV)により知的財産の概念が導入されており、栽培を行う際には品種を開発した者に対して栽培料を支払うこととなっている。しかし韓国の生産者は日本に対する栽培料の支払いを行わず、知的財産を侵害した上で日本に逆輸入させた。いずれも韓国の一部の生産者に許諾が与えられたものが、無断で増殖されたものである。
これに抗議する形で日本の韓国産イチゴの輸入量は減少した。なお、大韓民国内ではイギリス品種のイチゴも生産されているが、イギリスに対しては栽培料を支払っている。
2007年からは大韓民国内の生産者と開発者との間で栽培料に関する議論が開始され、2008年以降は日本の対象者に対しても栽培料の支払いが行われなければ成らないはずであるが、全く進展は無い。
2009年10月、韓国の聯合ニュースは『韓国で開発したイチゴ新品種の国内栽培比が日本品種を追い越した』とし、韓国は『ソルヒャンなど国内品種の栽培率が高まったのは、日本品種に比べておいしいうえに収穫量が多く、病害虫に強くて栽培技術も安定化されたため』と主張しているが、記事中の韓国産品種(ソルヒャン(雪香)・メヒャン(苺香)・クムヒャン(錦香))はそれぞれ「章姫(アキヒメ)」×「レッドパール」「栃の峰(トチノミネ)」×「章姫(アキヒメ)」「章姫(アキヒメ)」×「とちおとめ」という、どちらも上記の通り韓国では本来育てられていない筈の日本産品種同士の交配によるものである。」

サクランボ物語

 サクランボのおいしさを知り、サクランボを本格的に食べだしたのは、1975年に仙台に転勤になったときからです。それまではたまにはサクランボを買うこともあったかもしれませんが、格別おいしいものとは思っていませんでした。
 仙台では、特産地の山形県が近いせいもあって、時期になると果物屋やデパートなどの果物売り場の店頭にいっぱい並びます。買って食べてみて、佐藤錦のおいしさに驚くとともにすっかりサクランボファンになってしまいました。
 それにくだもの狩りの中で、一番たくさん食べられ、もうかったような気分になるのが、サクランボ狩りです。山形県や山梨県でサクランボ狩りを楽しみました。

1.サクランボの定義と歴史
 サクランボは桜の木の果実ですが、花を観賞する桜の木の実は大きくなりません。サクランボが成る桜の木は別の種類です。サクランボの果樹には、甘みのある「セイヨウミザクラ」、酸味の強い「スミミザクラ」、中国原産「シナミザクラ」がありますが、日本で栽培されるのはほぼ「セイヨウミザクラ」です。
 また日本で売られているサクランボには国産のものとアメリカ産があります。アメリカ産は、色が黒っぽく甘みが強いですが、国産は色がピンク色がかった赤で、さわやかな甘酸っぱさを持っています。日本では上品で繊細な味の国産サクランボが好まれているようです。

 サクランボは有史以前からヨーロッパ各地で自生していました。「セイヨウミザクラ」はイラン北部やヨーロッパ西部に野生していました。
 16世紀ころからヨーロッパで本格的に栽培されるようになりました。
 日本では平安時代の書物「本草和名」に「桜桃」と記述されていますが、これは中国の「サクランボ(シナミザクラ)」だと言われています。
 「セイヨウミザクラ」が日本に入ってきたのは明治初期です。ドイツ人のガルトネルによって北海道に植えられたのが始まりとされています。その後山形県をはじめ東北地方に広がり、各地で改良が重ねられました。

2.サクランボの種類
 サクランボの種類が合計いくつあるかは調べることができませんでした。果物ナビに載っているのは国産では14種類でした。
 ここではそのうち出荷量の多い順に5種類について説明しましょう。
 国産の5種の果皮はいずれも赤色です。

佐藤錦
 今やサクランボの王様というか代名詞というか一番人気の品種。親は「ナポレオン」×「黄玉」で、山形の佐藤栄助氏によって育成され、1914年(大正3年)に命名されました。果肉は乳白色で甘みと酸味のバランスがよく、食味もすぐれています。シーズンは6月中旬〜下旬ころ。

紅秀峰
 「佐藤錦」と「天香錦」を交配したもので、1991年(平成3年)に品種登録されました。果肉はクリーム色でややかたく、比較的日持ちする方です。酸味が少なく糖度が高いため、甘いサクランボとして人気。7月上旬ころから出回ります。

高砂
 アメリカ生まれで日本へは1872年(明治5年)に伝わりました。果肉は乳白色で果汁が多く、適度な酸味と程よい甘さの人気種です。出荷は6月中旬ころから。

ナポレオン
 粒がやや大きめでハート形をしています。ヨーロッパでは古くから栽培されていた品種で、1872年(明治5年)に入ってきました。果肉はクリーム色で果汁が多く、歯ごたえのある濃厚な味わいです。収穫時期は7月上旬ころ。

北光(水門)
 明治時代に北海道小樽市で発見された品種です。正式名称は「北光」ですが、「水門」で流通している方が多いようです。果頂がとがっていて果肉は柔らかめ、甘酸が調和したコクのある味わいがあります。収穫時期は6月下旬ころから。

アメリカンチェリー
 アメリカ原産のサクランボで、粒が大きく酸味が少なく甘みが強いのが特徴。価格が国内産に比べて安いのが魅力です。果皮が黒紫色の「ビング」と、赤色の「レーニア」が代表的な品種です。ほかに「ブルックス」、「ツラーレ」などの品種があります。

3.サクランボの統計
 左の表は農林水産省が出した県別の収穫量の統計です。なぜか山形県と北海道しかのっていません。合計から山形と北海道の数字を引くと3060トンが残ります。
 Wikipediaで調べると、ほかの主な産地として青森県、秋田県、山梨県が出ていました。3060トンはこの3県を含む他の県に振り分けられるのでしょう。
 左の統計は品種別の作付面積です。
 やはりサクランボの王様の佐藤錦が作付面積の大半を占めています。
 左は、輸入元の国ごとの表です。
 アメリカ産がほとんどとなっています。
 輸出の統計はネットには出ていませんでした。統計に載るほどほど多くはないのでしょう。

4.サクランボの見分け方
 粒が大きくて果皮に張りとつやがあり、色が鮮やかなものを選びましょう。皮が黒っぽくなっていたり褐色の斑点があるものは避けましょう。また軸が茶色ではなく青々としているものが新鮮です。

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