今年の3月14日に北陸新幹線の長野−金沢間が開業します。今まで長野新幹線と言われていた上野−長野間は正確には北陸新幹線の一部でした。全線が開通し晴れて北陸新幹線の名前が時刻表に載ることになりました。
 来年春には北海道新幹線が新青森−新函館北斗間で開業する予定です。
 昨年10月には新幹線開業50年と東京オリンピック開催50年の記念日を迎えました。
 今月はその新幹線を取り上げてみたいと思います。

参考資料:
「新幹線のしくみ」川島令三 監修 ナツメ社
「新幹線50年」松尾定行 東京堂出版
「Wikipediaのホームページ」

新幹線物語

1.新幹線の思い出
 昨年10月15日の手賀沼通信ブログに書いた新幹線の思い出です。
 「私は50年前の昭和39年(1964年)約4年半務めた生命保険会社を9月15日に退職し、10月15日に外資系のコンピュータ会社に転職することになっていました。1ヶ月のお休みができました。
 オリンピックの開会式の切符は手に入りませんでしたが、新幹線に乗ることはできました。10月2日に新幹線を利用して故郷の愛媛県伊予市に帰省したのです。できれば開業初日の10月1日の切符を取りたかったのですが1日はいっぱいで2日の切符となりました。
 東京駅の新幹線ホームから新幹線に乗り込みました。駅のホームも新幹線の車両も真っさらでピカピカ、大感激でした。カメラで車内を撮りまくりました。
 感動したのは冷却水が折りたたみの紙コップを使って飲めることです。ペットボトルの水など売っていない時代でした。
 ビュッフェで何か食べた記憶があります。翌年角界を去る若羽黒が窓際に座っていたのを覚えています。壁には大きな速度計がついていました。
 速度計の針を横目で見ながら、飛ぶように流れて行く外の風景を思いっきり楽しみました。」

2.新幹線開業までの経緯
 新幹線が開業するまでの日本の国鉄は、レールとレールの幅が1067ミリの狭軌を採用していました。これは明治維新後にイギリスから招いた技師が勧めたものを採用したためです。当時の世界的標準は1435ミリの標準軌でした。ところがイギリスの技師は、日本のように山や川が多くては広い軌間を設けるのは困難、狭軌の方が工事費が安くすむ、そんなに輸送の需要が見込めないなどの理由で狭軌を勧めたのです。開国したばかりの日本人はどちらがよいか判断することは不可能でした。
 その後満洲が建国され、日本が南満州鉄道の経営を行うことになりました。満鉄は1435ミリの標準軌で、スピードも輸送力も日本の鉄道以上でした。
 日中戦争がはじまると、標準軌で東京−下関間に新しい路線を引き、海底トンネルで釜山に上陸、朝鮮を経て南満州鉄道を通って北京まで乗り入れるという計画が持ち上がりました。
 そして1940年「弾丸列車計画」の予算が帝国議会で可決されました。これは東京−下関間に路線を引く予算です。翌年トンネル工事が始まっています。戦争で中止されましたが、これが新幹線の下敷きになりました。弾丸列車計画を進めた人の中に島安次郎がいましたが、新幹線計画を押しすすめた十河信二の下で技師長を務めたのは、息子の島秀雄でした。孫の島隆も技術面で貢献しました。

3.新幹線の路線
 開業中の新幹線は次の通りです。
 

4.新幹線にまつわる主な出来事
・1964年10月1日。東海道新幹線開業。「ひかり」は途中名古屋と京都に停車。所要時間4時間。2等車
 運賃1180円、特急料金1300円。「こだま」は各駅停車。駅の数は東京、新大阪を含めて13。所要時間
 5時間。2等車運賃1180円、特急料金1100円。すべて12両編成。
・1965年11月1日。スピードアップ。「ひかり」3時間10分。「こだま」4時間。
・1969年4月。東海道新幹線三島駅が開業。
・1970年2月。すべての「ひかり」が16両編成となる。
・1972年3月。山陽新幹線新大阪−岡山間開業。駅の数は両端を含めて6駅。
・1975年3月。山陽新幹線岡山−博多間開業。駅の数は両端を含めて11駅。東京−博多間6時間56分。
 「ひかり」に食堂車を連結。
・1982年6月。東北新幹線大宮−盛岡間開業。駅の数は両端を含め13駅。「やまびこ」と「あおば」。200
 系12両編成。
・1982年11月。上越新幹線大宮−新潟間が開業。駅の数は両端を含め9駅。「あさひ」と「とき」。200系
 12両編成。
・1985年東北新幹線上野−大宮間が開業。
・1985年3月「やまびこ」は国内最速の時速240キロ運転。上野−盛岡間2時間45分。
・1985年3月東北新幹線水沢江刺駅、新花巻駅が開業。
・1987年4月。国鉄が分割民営化し、JR東海が東海道新幹線、JR西日本が山陽新幹線、JR東日本が東
 北新幹線と上越新幹線を継承。
・1988年3月。東海道新幹線に新富士駅、掛川駅、三河安城駅が、山陽新幹線に新尾道駅、東広島駅が
 開業。
・1991年3月。東北新幹線にくりこま高原駅が開業。
・1992年3月。「のぞみ」の運転開始。東京−新大阪2往復。所要時間2時間30分。最高時速270キロ。
 全車指定制。
・1992年7月。山形新幹線福島−山形間が開業。両端を含めて6駅。東京−山形間最速「つばさ」で2時
 間27分。400系6両編成。
・1993年3月。東京−博多間の「のぞみ」運転開始。所要時間5時間4分。最高時速270キロ。
・1995年1月17日。阪神淡路大震災で東海道新幹線・山陽新幹線の京都−岡山間が不通。
・1995年4月8日不通区間が全線で再開。
・1997年3月。秋田新幹線盛岡−秋田間が開業。両端を含めて6駅。東京−秋田間最速「こまち」で3時間
 49分。E3系5両編成。
・1997年3月。JR西日本の500系「のぞみ」が新大阪−博多間で最高時速300キロの営業運転。所要時
 間2時間17分。
・1997年6月。新幹線初の自動改札機が静岡駅で使用開始。
・1997年10月。長野新幹線高崎−長野間が開業。両端を含め6駅。東京−長野最速「あさま」で1時間
 19分。
・1999年3月。山陽新幹線の厚狭駅が開業。
・1999年12月。山形新幹線が新庄駅まで延びる。途中に4駅が開業。
・2000年3月。食堂車が新幹線からなくなる。
・2002年12月。東北新幹線が八戸駅まで延びる。途中に2駅が開業。東京−八戸間最速「はやて」で2時
 間56分。最高時速275キロ。
・2003年10月。東海道新幹線の品川駅が開業。
・2004年3月。上越新幹線の本庄早稲田駅が開業。
・2004年3月。九州新幹線の新八代−鹿児島中央駅間が開業。両端を含めて5駅。800系6両編成。グ
 リーン車なし。全車両禁煙。
・2004年10月23日。中越地震で越後湯沢−新潟間不通。「とき325号」が脱線。
・2004年12月28日。全面復旧。
・2005年12月。長野新幹線全車両禁煙。
・2007年3月。東北、上越、山形、秋田新幹線が全車両禁煙。
・2008年11月。0系新幹線が山陽新幹線から引退。0系の最後。12月に「さよなら」運転。
・2010年12月。東北新幹線八戸−新青森が開業し全通した。途中1駅開業。最速「はやて」東京−新青
 森間3時間20分。
・2011年3月11日東日本大震災で東北・秋田・山形・上越・長野・東海道新幹線が不通。
・2011年3月。九州新幹線博多−新八代間が開業。両端を含めて8駅。「みずほ」「さくら」「つばめ」。
・2011年4月29日最後まで不通だった東北新幹線が復旧。
・2011年9月。新青森−鹿児島中央間2000.8キロ。最も早い乗り継ぎで10時間21分。
・2013年3月東北新幹線の「はやぶさ」が国内最速320キロで営業運転。
・2015年3月北陸新幹線長野−金沢間が開業。両端を含めて8駅。「かがやき」「はくたか」「つるぎ」「あさ
 ま」。東京−金沢間最速「かがやき」2時間28分。

5.新幹線の安全と乗り心地のために
 新幹線は開業当初から安全と乗り心地を考えて作られましたが、その後も改良に改良を重ねています。その一端をまとめました。
運行制御装置
 新幹線の走行は、高速運転の安全性を高めるため、開業当初からすべて総合指令所の指令によって管理されています。CTCと呼ばれるものです。
 その後CTCだけでは対応できないケースも出てきたため、COMTORACが加わり、さらにそれの改良版COSMOSに替わりました。
台車
 高速運転による蛇行動を抑えるためと乗り心地を良くするため、金属の軸ばねと2次ばねに空気ばねを使っています。空気ばねは必要時に空気を注入して乗り心地を良くしています。
レール
 レールの中で一番重い1メートルあたり60キログラムのレールを使っています。また継ぎ目の振動を防ぐため200メートル以上のロングレールにしています。東北新幹線の区間では60キロメートル以上のレールを使っているところもあります。
ブレーキ
 基礎ブレーキ(空気ブレーキ)と電気ブレーキを使っています。電気ブレーキはモーター内で発生した電気ブレーキの伝記を架線に戻し他の列車で消費しています。
車体
 高速で走るため車体は航空機に似せて流線型を採用してきました。トンネルに高速で入ると出口で「トンネルドン」と言われる騒音を発します。それを避けるために風洞実験を繰り返し車体を改良しています。
パンタグラフ
 0系では2両に1つのパンタグラフがついていました。パンタグラフは大きな騒音を発生させます。風切り音や接触音や放電の音です。200系以降ではパンタグラフの数を減らしています。そのほかカバーをつけたり、フクロウの翼を参考にして細い溝をつけたり、シングルアーム式にするなどの工夫を凝らしています。
雪害への対策
 積雪の多い東北・長野・上越新幹線区間では、先頭車両のスノーブラウで線路上の雪を払いのけます。また湧き水や川の水を加熱して利用し、全自動のスプリンクラーから散水しています。
早期地震警報システム
 ユレダスと言われる早期地震警報システムが導入されています。地震による揺れは、初期微動(P波)の後に主要動(S波)が起こる場合がほとんどです。ユレダスはP波を感知して、走行中の車両を停止する信号を送るのです。

6.新幹線の系列
 新幹線の系列は現在まで17系列です。北海道新幹線の系列が「H5」と決まっているのでそれを入れると18系列となります。

 新幹線といえばだれでも思い浮かべるのは0系です。1964年にデビューしてから、2008年に引退するまで、44年2か月も現役で走りました。最後は山陽新幹線の「こだま」でしたが、いつまでも新幹線の顔として記憶され続けることと思います。
 各新幹線の系列の特徴をまとめてみました。
 新たな高速時代を築いたのは、「のぞみ」の車両として登場した300系でした。最高時速は270キロ、軽量化がそれを可能にしたのです。
 JR西日本がカワセミのくちばしからヒントを得て開発した500系は人々をあっと驚かせた斬新なスタイルでした。最高速度300キロの営業運転を日本で初めて可能にしました。
 九州新幹線を走る800系は水戸岡鋭治さんがデザインした「乗って楽しい新幹線」です。車両内部が豪華絢爛となっています。
 JR東日本は途中からEの文字を加えるようになりました。 E1系はオール2階建ての車両で、急増中だった通勤通学客に備えたものです。車両の一部の2階は横6人席になっていました
 E4系はE1系と同じコンセプトです。
 E2系は山形新幹線、秋田新幹線のミニ新幹線に使われました。
 E5系は営業運転を開始した数日後に東日本大震災が起こっています。運転再開後は震災復興を力づよく支援しました。現在は最高時速320キロで走っています。
 E7系とW7系はJR東日本とJR西日本が北陸新幹線のために共同開発した車両です。仕様はほぼ同じものとなっています。

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