今月は元東京都中推協会長の寺井様からいただいたエッセイと手賀沼通信ブログからの抜粋を載せました。
 手賀沼通信ブログからの抜粋は先月号に続いてですが、以前に比べて外出が少なくなり、体験談が乏しくなってきた手賀沼通信にとっては、格好の埋め草になっています。

特別寄稿
花追い人            寺井健二


 日本の四季は私たち日本人にとって天からの贈り物である。地球上この恩恵を得られる数少ない国に生まれたのは、幸運ともいえる。気候が厳しい外国を旅すると、その有難さがよく分かる。日本人の楽しみは四季の変化から生まれたといってもよさそうだ。多彩な四季が生み出す花鳥風月を楽しむという粋人が我々の周りには多く見られる。

 さて私、年を経ると共に、なんとなく花を追いかけたい気分になってきた。古人の花遍歴のあとを辿るのも私の趣味(言葉探し)と重ね合わせて楽しい作業だ。遠出が億劫となった昨今だが、近在でも充分四季の花々を楽しめるのを知り、とかく家にこもりがちな私が、花という対象があるとこまめに外出する。

 どんな花を追っかけるのか、きまりはないが、きっかけはある。所謂口コミによる花情報。旅先で発見した古人の一句からの誘発。NHKラジオの定番である誕生日の花で、近所にあるものを探す、等など。今のラインアップは:−
辛夷、枝垂桜、片栗、牡丹、石楠花、百日紅、萩、蝋梅、(誕生日の花、暦の順番に)
河津桜、高遠コヒガン桜(誕生日の花のリスト外)

 並木がある。密集している。全体の景色が素晴らしい。この辺がポイント。私が好んで選んだ花はすべて私なりの趣向に沿うものだが、そのうちの幾つかを紹介したい。
○ 枝垂桜:東京の各庭園には普通に点在しているが、馬事公苑のそれは、水鳥が泳ぐ池の周辺を取り囲
  み、数も多く、写真家にとって、絶好の被写体となっている。
○ 片栗:「もののふの八十(やそ)をとめらが くみ乱(まが)ふ 寺井の上のかたかごの花」(大伴家持、万葉
  集、<もののふの八十>は数多くの枕詞)熱海梅園の奥にある中山晋平記念館の庭園でこの和歌を発
  見し、片栗(かたかご)探しに精出すことになった次第。寺井は地名でも、人名でもなく、お寺の井戸の
  意。八王子・片倉城址公園の片栗は有名。
○ 高遠コヒガン桜:蘆花恒春園に15本あり、東京では他に新宿御苑に数本あるだけ。近所の小学生が育て、
  手入れしている菜の花の黄色が前景に広がり、桜の濃いピンクとのコントラストが素晴らしい。近所の人には
  積極的に此処での花見を推奨している。徳富蘆花ゆかりの庭園(入場無料)。

 花を見ることは心身の健康に資すると確信している。「現場へ歩を運ぶ」「感ずる」「花と会話をする」「写真を撮る」「来年の再会を約す」(実現の可否はあえて問わない)「余韻を楽しむ」・・・。効用はまだまだありそうだ。冬桜は次の加入候補と決めてあるが、これまでの花を追いかけるだけで、充実した生活が送れ、元気に過せそうである。

特別寄稿
花追い人・パートU            寺井健二


 昨年から、意識的に花追い旅をしている。エッセー「花追い人」を書いたが、それに束縛されているわけではない。徒歩、バス、電車、単独か組み合わせの、大げさではない小旅行だ。同じ花を狙って何回も行くのは、一番きれいに咲く頃を目指すからだが、これが意外と難しい。花の盛りにぶつかるのは、相当な僥倖と言わなければならない。

 昨秋、向島百花園に萩のトンネルを見に行った。所在地は、墨田区のスカイツリーに近いところ。この庭は古くから文人墨客に愛されてきた。たとえば浅草生まれの久保田万太郎の名前が登場する話を新聞小説で読んだ記憶がある。あまり詳しくないが、210年の歴史を持つ由緒ある庭である。季節の花々が点在し、花の名札が置かれているのは、私には嬉しい心遣いだ。ここでは秋の草花がよく分かって、勉強になった。秋の七草や吾亦紅なども見られた。

 冬の蝋梅。近所に有りそうで無いのがこの花。幸い散歩コースになっている馬事公苑にあった。清楚な小粒の花は、上品な青味の黄色で、冬の景色として絶品だ。近よって独特の香りを楽しめるのもこの花の魅力。冬の花としては山茶花のほうが広く知られているが、希少価値という要素を入れて、この花に肩入れしている。この冬は3回通った。

 今春、片栗の花が群生している練馬区の光が丘に程近い清水山公園を訪ねる機会に恵まれた。東京都区内にこんな場所があることに感激した。私の小学校の友人S君が多忙にかかわらず半日を案内に費やしてくれた。八王子の片倉城址公園と比べると密集度が高く、圧巻であった。環境が揃わないと開かない、地味な花と理解しているが、不思議というか、ここの花は華やかな気分になった。暫らくぶりに見たせいか心休まる一日だった。

 八月某日のメモ。−どうしても不忍池へ行きたい。早朝涼しいうちに行きたい。だが身体不調で断念せざるを得なかった。睡蓮と蓮。浮いているのが睡蓮、根が水の中にあるのが蓮とインターネットで知った。ついでに蓮を詠んだ和歌と俳句を拾い集めてみた。

小夜ふけて 蓮の浮葉の露のうへに 玉とみるまで やどる月影    金槐和歌集  源 実朝
ほのぼのと 舟押し出すや 蓮のなか 夏目漱石
朝風に ぱくりぱくりと 蓮開く   正岡子規

 最近、サルコペニア(加齢とともに足の筋肉が衰える)が進み、歩行の衰えが深刻になってきた。地域の健康体操、毎日のストレッチ・筋トレと儚い努力を続けているが、どこまで我が体を動かせるか、自信のない日々が続いている。自然体でふるまうとは、日頃の私のセリフだが、まあ多少の努力をして、行けるところまで行くか・・・という心境である。

手賀沼通信ブログ抜粋

スコットランド独立否決(NO.748)(平成26年9月20日)

 平成26年イギリス北部スコットランドの独立についての住民投票が開票され、独立反対55.25%、賛成44.65%で独立は否決されました。
 スコットランドの住民は独立による国造りの混乱より、生活の安定を願ったのでしょう。スコットランドは住民投票の前に、イギリス政府から所得税に関連した税の権限移譲など12項目を土壇場で引き出しました。
 この住民投票の結果は、イギリス本国だけでなく、EUやアメリカも歓迎しています。日本の主要新聞各社の社説もこの結果には肯定的です。
 もし独立が認められていたら、イギリスだけでなく世界経済にも大きな混乱をもたらすことになったと思われます。
 ただ、イギリスは大きな課題を抱えたようです。イギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドからなっています。今まではロンドンのあるイングランドが政治や経済の主導権を握り、他の3地域をいわば支配してきたといえます。
 スコットランドに刺激を受け、ウェールズや北アイルランドからの権限拡大の要求にどうこたえるかという課題が出てくるでしょう。その上イングランド自身からも他の3地域並みに自治議会を持つべきという意見も出ているようです。
 ヨーロッパではスペインのバスク自治州やカタルーニャ自治州やベルギーのフランドル地方からも独立運動が起こっています。今回のスコットランド住民の決断はその成り行きにも大きな影響を与えたのではないでしょうか。

御嶽山噴火の捜索が難航(NO.751)(平成26年10月3日)

 平成26年9月27日午前11時53分、長野、岐阜両県にまたがる御嶽山(3067メートル)が突如噴火しました。
 ちょうど紅葉シーズンの土曜日のため約250人ほどの登山者が頂上付近にいたと報道されています。お昼を食べていた人もいたことでしょう。
 10月3日現在、死者は47名、さらに16名が行方不明とのことです。死者47名は、死者44名を出した雲仙普賢岳の火砕流を上回り、戦後最悪の火山災害となりました。
 現在約1000人の県警、自衛隊、消防の人たちが連日山に登って捜索活動を続けていますが、悪天候のためしばしば中断されました。今日も雨のため中断したままです。
 御嶽山は1979年に中規模の噴火、91年と2007年に小規模の噴火がありましたが、死者は出ていませんでした。
 登山者もまさか御嶽山が噴火するなんて思いもよらなかったと言っています。グレートトラバースの田中陽希さんは6月11日に御嶽山に登りました。私はその様子をテレビで見ています。噴火を心配する映像は全くありませんでした。
 この噴火はマグマで地下水が熱せられて爆発する水蒸気爆発でした。死者47人のうち46人は噴石の直撃による損傷死で、1人は熱傷死とのことです。
 日本は火山だらけ、日本百名山にも火山が多く含まれています。私も火山には多く登りましたが、雨や寒さに対する準備はしていきましたが、噴火に対する準備など考えたこともありませんでした。
 富士山も火山です。もう登山シーズンは終わりましたが、来年の登山にはどんな影響が出るのでしょうか。外国人など大幅に減るのではないでしょうか。
 御嶽山の捜索はまだ続いています。早く行方不明者が見つかるよう願っています。(その後の捜索で死者57名、不明6名となり、年を越しました)

日本人3人がノーベル物理学賞を受賞(NO.754)(平成26年10月9日)

 平成26年10月7日、名城大学の赤崎勇教授、名古屋大学の天野浩教授、カルフォルニア大学サンタバーバラ校の中村修二教授がノーベル物理学賞を受賞しました。
 3人が開発した青色発光ダイオードが実用化に結び付き、ろうそく、電球、蛍光灯に続く「第4世代の光」として、LEDが広く社会に普及する礎を築いたことが評価されました。
 LEDは省エネで寿命が長いという特徴があります。LEDは青色の登場で、赤、緑、青の3原色がそろいました。信号機や大型ディスプレイや携帯電話やスマホなどに使われています。
 わが我孫子市若松第2自治会の街灯も昨年すべてLEDに替えました。初期費用は掛かりましたが、電気代が安くなったため数年で取り戻せます。
 日本人のノーベル賞は1949年に湯川秀樹さんが物理学賞を受賞したのが第1号です。
 それを皮切りに、物理学賞10名、化学賞7名、生理学・医学賞2名、文学賞2名、平和賞1名の合計22名です。
 アジアでは断トツの人数です。ただ喜んでばかりもいられません。
 読売新聞の社説に次のように出ていました。
 「日本の研究現場で、人材不足や競争力の低下が深刻化していることだ。成果が出るまでに手間や時間のかかる技術開発分野に、若手の研究者が集まらなくなっている。
 科学技術水準の目安となる論文発表数は、2000年前後は世界2位だったが、現在は中国などに抜かれ5位に低迷している。
 今回の受賞は、科学を志す若者に大きな夢を与えるだろう。激しい国際競争の中で苦戦を強いられている日本の『もの作り』が再び活性化することを期待したい。」

ビール類を飲む人はまた高い税金を納めることになる(NO.760)(平成26年11月2日)

 平成26年10月25日の読売新聞夕刊に「発泡酒と『第3』統合 政府・与党方針 税額引き上げへ」という記事が出ていました。
 その内容は次の通りです。
 「政府・与党は、ビール類にかかる酒税を2015年度税制改革で見直し、『発泡酒』と『第3のビール』を統合したうえで税額を引き上げる方針を固めた。統合後は、発泡酒と第3の税額を段階的に同額にする意向で、小売価格はいずれも上がる可能性が高い。(中略)
 ビール類の税額は、原料となる麦芽に比率などによって異なる。現在は1缶(350ミリリットル)あたりでビールが77円、発泡酒は47円、第3が28円だ。
 ビール類の税収は酒税全体の3分の2を占める。政府・与党は将来的にはビール類全ての税額を統一したい考えだ。税収総額を変えずに3種をすべて統一すると、1缶当たりの税額は55円となる。」
 とんでもない話です。
 ビールの税率が他の酒類より高いため、そして国際的にも高いため、ビール会社は涙ぐましい努力をしてビールに替わる安い商品を開発してきたのです。それが「発泡酒」であり「新ジャンル商品(第3のビール)」なのです。これらは消費者にも支持され受け入れられました。ビールに似た飲み物が安く飲めるようになったのです。
 政府・与党はそんなことお構いなしに税収をあげようとしているのです。
 ビール製造5社で構成する「ビール酒造組合」と「発泡酒の税制を考える会」は、昨年9月に政府に対して「ビール・発泡酒・新ジャンル商品(第3のビール)の酒税に関する要望書」を出しています。その中でいろいろ数字をあげながら次のように述べています。
 「・『ビール』『発泡酒』『新ジャンル商品』の酒税は、他の酒類と比較して、極めて高くなっています。アルコール分1度1リットル当たりの酒税額を比較すると酒類間の不公平が明白であり、特にビールは他の酒類の4倍以上と群を抜いて高額です。
 ・醸造酒であるビールに対して、アルコール分1度あたりで、蒸留酒に比べ高い税率を課しているのは、主要諸国の中で日本だけです。欧米では、蒸留酒には高い税率、醸造酒であるビールやワインには低い税率が標準となっています。
 ・日本の酒税総額の約7割はビール・発泡酒・新ジャンル商品が占めます。ビール・発泡酒・新ジャンル商品の酒税を高額・高率で維持した結果、酒税の国税に占める割合は、日本が先進諸国の中で著しく高比率となっています。
 ・日本のビールの酒税額は国際的にみて極めて高くなっています。ドイツの17倍、アメリカの10倍となっています。日本のビールの小売価格に占める酒税の負担は、国際的にみても、非常に高率かつ高額です。
 私たちは、ビール・発泡酒・新ジャンル商品(第3のビール)の酒税の大幅な減税を強く要望します」
 国はこの要望を全く無視しています。ビール愛好家として憤慨に堪えません。

 その後、国はビールにかかる酒税の見直しを2015年の税制改革では行わず、先送りとなりました。大変結構なことです。

やはり日本の野球は強かった(NO.765)(平成26年11月21日)

 前々回のブログで「日本の野球は強くなった」と書きましたが、日米野球の7戦全部が終わったあとで感じたのは、日本の野球はメジャーリーグと変わらないということでした。
 前々回の記事を書いた日にMLB選抜と侍ジャパンの第3戦が行われましたが、ジャパンはMLBをノーヒットノーランに抑えて4−0で勝ちました。今までの対戦で日本チームがアメリカチームをノーヒットノーランに抑えたのは初めてです。
 解説者が逆はあると言っていました。それだけ日本の野球のレベルが上がったのです。
 第4戦と第5戦はMLB選抜が勝ちましたが、最後に沖縄で行われた親善試合では日本が勝ち、MLB選抜との7戦は日本チームの4勝3敗で終わりました。MLB選抜と侍ジャパンの公式戦も侍の3勝2敗でした。24年ぶりのことです。
 しかも侍ジャパンは助っ人なしの全員日本の選手です。MLB選抜はアメリカ人だけでなく中南米やカナダや日本の選手が混じっている強豪チームです。侍ジャパンは3年後のWBCを見据えて若手中心のチームを作りました。最高年齢は糸井選手の33歳です。
 パリーグの選手が多かったのですが、それだけパリーグには優秀な若手が多いのでしょう。3年後にはこれから入団する選手も加えてさらに強いチームができると期待しています。

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