今月は弟のエッセイと手賀沼通信ブログからの抜粋です。
 弟のエッセイは同時代の私たちにとって同感する人が多いと思い、載せることに積極的でなかった弟を説得しました。

特別寄稿
わたしに残された小銭
      新田自然


 財布の中身のことが気になりだしたのは75歳を過ぎたころからだったろうか、私の人生の財布は、透かして見るともう10枚ほどの小銭しか残っていないようだ。それまでは、気にもしていなかったのだったが、気になると、もう本当にわずかしか残っていなくて、それもいつの間にか勝手に消えていくのだ。やがてゼロになることはわかっているつもりだったが、そんなに少ないと気づくと、その小銭はまだまだ使いみちのあるお金で、いとしくさえある。
 人には持ち時間というものがあって、気づいたときがその人の残りの時間だと、ふと思いついて大発見をしたように感じたのは、小学校の低学年の時だった。祖父母に育てられていた私は、なぜじいさんはあの歳で、なぜ僕はこの歳なのか、じいさんにも僕の歳はあったのだろうか、その「いま」という時間の不可逆性が不思議だったのだろうが、不思議な感慨を覚えたことを記憶している。
 時代が進んで高校生ぐらいだったか、新聞の対談か何かで、東急グループ総帥でもある五島慶太氏が「若い日に戻れるならば、全財産を投げ出してもよい」と言っているのを読み、なんと勿体ないことを言うものだ、と感じたことがあった。その時の私には「時間」と「財産」をはかりにかけるという発想がなかったし、あの巨大な財閥の主が全財産を投げ出す、という発言に驚いて、その言葉が深く胸に残った。五島さんは昭和34年に77歳で亡くなったが、その時、彼自身にはもう時間が残されていない、ということを実感しての発言だったのだろう。自分の時間が無制限にあると思っていた私には「勿体ない」と映ったのだ。
 30才ころだったか、帰郷した時、四国の叔父がサツキの盆栽を始めたというので見に行った。「どうして松の盆栽をやらないの?」と訊いたら、「松を育てるには時間がかかる、ワシにはもうそんな時間は残されていない」と言った。そんなものかと感じた。叔父は数年後に亡くなった。やはり77歳くらいだった。
 いまこうやって、彼等と同じ年齢になり、「自分に残された時間」の不確実性に気づいたとき、時間の持つ意味と、はかなさに、今更ながら愕然としている自分がある。天からの御指名は突然にやって来るのだ。心臓や脳の発作のように何の前触れもなくやって来るもの、癌のように多少の時間を与えてくれるもの、早い遅いはあっても、それも近い未来にあることは間違いない。同期の仲間や先輩の訃報、入院の報告などを聞くと、迫っている自分の出番を、いやがうえにも予告されているように感じる。
 また最近は、時間の経つのが、やたらと早くなってきた。ゆったりとした老後などというけれど、この無常迅速ぶりはなんだ。先日年賀状を整理したばかりなのに、もう半年が過ぎ去った。梅は、桜となり、藤も終わり、いまはもう深緑の夏だ。日課となっている早朝ウォークに出ていると、花の時期の移り変わりの速さに、ある種の恐ろしさを感じるのだ。春先、毎月行われている街道歩きの年間スケジュールが送られてきて、12月の忘年会の日程まで書かれていると、もうそれで1年が終わったような気がした。歩きながら季節を追っかけるというより、季節という時間に急き立てられているという感じなのである。
 数年間、時をおいてみる人の顔の変化も早い。アイドルだった女優が、いいお婆さんになっていたり、プロ野球の選手が老人顔になっているのを見ると、自分もそうなっているのかと思わざるを得ない。鏡に見る昨日と今日の顔は全く変わっていないにもかかわらず、時間の経過で別人になってしまうのだ。
 初めて老けるという感触を持ったのは、髪の毛がほとんど白髪になった時や、白内障となった時、あるいは温泉に行って、鏡に映る自らの裸像を眺めた時だったか。でも歳はとったなとは思っても「命の時間」を意識することはなかった。それが迫っていることを、いま、いやがうえにも実感させられている。そして歌の一節ではないが「わたしは何を残しただろう」と感じたりしている。以下の言葉文字も実感がこもる。
  生死事大 光陰可惜
  無常迅速 時不待人

 しかし、そんなことを気にしてびくびくした毎日を送るより、今楽しく、元気でいることを「なによりのこと」と開き直って生きることが、元気を保たせる秘訣だと、103歳を超えた日野原先生も言っておられる。そのためには、頭と身体を健康に保ち、積極的な毎日を送ることだと。もう財布のなかにいくばくかの小銭しか持ち合わせていない筈の先生が、極めて豊かに生きておられるのである。先生は年齢的には、わたし等よりはるかに貧乏なはずだが、それにもかかわらず豊かな発想しておられるのだ。先生の財布には隠しポケットがついているのだろうか。
 気力と体力の維持が元気の源であることは言うまでもない。それらは車の両輪だが、どちらが先かと問われれば、気力が先だと言いたい。やろうという意識があって、それに体がついてくるのだ。「もうこの歳だ」と怠けようと思えばいくらでも怠惰な毎日を送れる。気持ちを強く持って体を動かせば、自然と体力はついてくる。
 やり方はいろいろあるが、いまやっていることを「続ける」ことが大切だと思う。一旦止めると再開するには続ける以上に労力を要する。
 「続けている」という点で私がやっていることは、山歩きは、元の会社の現役の仲間と、挑戦可能な低山に限って参加しており、大学の校友会の仲間とのハイキングなどもやっている。趣味の仲間と始めた街道歩きは、もう15年にもなり、東京を起点とするほとんどの街道は歩き尽したけれど、まだ止めるつもりはなく、いま越後路を歩いている。早朝ウォーキングも雨の時以外は続けている。自然に触れることは季節に触れることであり、特にいまどきのウォークは楽しい。たまに出会うカワセミや、季節の花々、妙齢の御婦人との会話も嬉しい。歩きながら自分用と決めつけた桜の木にぶら下がって懸垂してみたり、小山の上で富士山を眺めながらストレッチしたりしているが、続けることで確実に体力は強くなっている。電車で少々立っていても平気だし、肩こりも湿布薬が不要になっている。とはいえこの歳だ、故障しかけた部分は多く、だましだましではあるけれど、とりあえず、今ここにある健康に満足感し、生きていることに感謝している。
 文章は月2回原稿を書いて、サークルで発表している(この原稿もその1つだが…)。藤沢市から委嘱された文芸誌の編集委員も続けている。俳句は街道歩きをしながら句会を開いており、これも毎月の定例行事である。俳句や文章は推敲するのも楽しい頭の体操だ。いいコンサートがあれば躊躇なく出かける。先日はマーラーの大音響に大満足をして戻ってきた。料理も楽しいモノ作りだ。朝の弱いカミさんに代わって味噌汁を作っているが、この作業は化学実験のようでじつに楽しい。調味料の入れ具合で微妙に味が変わるのが面白い。これらのことは、言い換えれば、人に会う、声を出す、ものを作る、感動する、といったことであり、日々を楽しくしてくれる要素だと思っている。
 そんなことをしても、単なる時間つぶしではないかという声もあるが、まあいいではないか、QOLを楽しみつつその日を生きる、それが小人たる私に、いま与えられた小さな権利だ。しかし、ただ生きながらえることだけはしたくない。兄夫婦が尊厳死協会に入ったという。そういえば死んだ妻も入っていた。その意思表示は、治療にいろいろと口を出す周囲の人たちをも、本人の意思だと納得させることにもなる。回復する見込みのない老人を国家の費用をかけて生きながらえさせることは、もう無駄でしかない。
 老人が、生きている意味とはなんだろう。それは、これまでやってきた経験を後世の人たちのために役立てることだろう。得意だったことを教える、花を植えて美しく飾る、周囲を清掃することなど、なんでもよい、小さな役立ちのなかに意味は存在するのではないか、そんな役立ち方をする存在でありたいと思う。

 もう一度、財布の底をよく見つめてみる、はっきりとは見えないが、百円玉のようなものが数枚残っているようだ。まだまだ使えそうな小銭だ。小銭ではあるが、使いようによっては百円を10円に、10円を1円にすることが可能だ。細かくした1円1円を大切に使う、そのことは1日1日、1刻1刻を大切にすることだろう。もう残されている小銭は放っておいても消滅するしかない。未来なんて不確実なもののために持ち続けるより、「いま」という現実に費やそう。
  いまというときしかないぜ蝉法師
 だけど、私の財布の中身は、はたして後いくらあるんだろう。

手賀沼通信ブログ抜粋

はやぶさ2打ち上げ成功(NO.768)(平成25年12月4日)

 平成26年12月3日午後1時22分、小惑星探査機「はやぶさ2」が、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、地球と火星の間にある小惑星「1999JU3」に向かうための軌道に乗りました。
(画像のクリックで拡大表示)
 4年半前には「はやぶさ」が奇跡の帰還を果たしました。その結果3本の映画ができました。「はやぶさ2」はその後継機種です。
 目的地の小惑星には、生命のもとになる有機物や水が存在するとみられ、持ち帰った岩石を分析すれば、生命の起源を探る手掛かりが見つかると期待されています。
 3年半かかって2018年の半ばに小惑星に到着、1年半小惑星を探査、2019年末に小惑星を出発、帰りは1年で往復52億キロにも及ぶ旅を終えて、2020年末に地球に戻ってくる予定です。ちょうど東京オリンピックの年です。
 「はやぶさ」の経験を踏まえて「はやぶさ2」にはいろいろ改良が加えられています。何とか無事に帰ってきてほしいと願っています。

衆議院選挙の投票率は予想通り戦後最低となった(NO.773)(平成26年12月21日)

 平成26年12月14日に衆議院議員選挙が行われました。投票率は戦後最低の52.66%でした。
 12月5日の私のブログで「今回の衆議院選挙では『積極的棄権』をするつもり」と書きました。
 理由は今回の選挙は選挙をする大義がない、700億円近い無駄遣いをする必要はない、その間政治がストップする、与党が勝つのは目に見えているなどです。
 こんな政治に一国民の不信感を表すためあえて棄権する。投票率が下がれば政治への不信感が政治家にも見えてくるはずと考えた結果です。
 でもそんな結果にはならなかったようです。
 自民党と公明党の与党は予想通り当選者の数を増やし大喜びでした。
 数こそ増えましたが党首が落選した民主党では時期の党首選びに右往左往です。
 共産党は数を大幅に増やしましたが、これは自分たちの主張が認められたせいではなく、投票率が減ったためです。投票率が減ると、投票を必ずする信奉者のいる公明党と共産党は当選者が増えるのです。
 ほかの野党の中には存続が危うくなったところもありました。私の期待した政治の不信感を解消しようとする努力は今のところは見られませんでした。
 読売新聞では、「戦後最低52%の衝撃」として次のように述べられていました。
 「今回の衆院選では、共産党を除く野党が候補者を出さなかった選挙区が、前回の衆院選の8から39に増えた。与党と共産党の一騎打ちとなった28の選挙区のうち24選挙区で投票率は全国平均を下回った。このうち14選挙区では50%に満たなかった。投票当日の天気も投票率には災いしたようだ。14日に積雪のあった石川県では前回比12.49%減の49.16%、福井県では同11.75%減の50.0%と低迷した。」
 国民の半分強の投票率ででも、選ばれた安倍政権の責任は重いものです。景気回復、財政再建などに死に物狂いで頑張ってほしいものです。

2014年日本10大ニュース(NO.774)(平成26年12月27日)

 平成26年12月27日、読売新聞の読者が選ぶ「2014年日本10大ニュース」が決まりました。
1 御嶽山噴火で死者57人、行方不明者6人
2 消費税8%スタート
3 ノーベル物理学賞に青色LEDを開発した赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏
4 全米テニスで錦織圭が準優勝
5 「アベノミクス」の評価を問う衆院選
6 広島市北部の土砂災害で74人が死亡
7 STAP細胞論文に改ざんなど不正
8 ソチ五輪で日本は金1、銀4、銅3
9 世界文化遺産に「富岡製糸場」
10 高倉健さん死去
 読売新聞が用意した63項目から10項目を選んで応募する方法です。有効応募総数は昨年の8249通より大幅に増えて9884通でした。10項目的中者も昨年の6人から89人に増えました。
 私も応募しました。4年連続4回目です。おしいことに1項目を外し9項目が的中しました。今まででは最高の的中率でした。
 今年は誰にも選べる事件や出来事がはっきりしていたのかもしれません。9項目以上の的中者は12%、8項目の的中者が最も多く29.22%でした。
 私が選んだのは7の代りに
13 朝日新聞が慰安婦報道の一部を撤回。後に「吉田調書」の誤報も認め謝罪。
でした。

2014年海外10大ニュース(NO.775)(平成26年12月28日)

 平成26年12月28日、読売新聞の読者が選んだ「2014年海外10大ニュース」が決まりました。
1 エボラ出血熱でWHOが緊急事態宣言
2 韓国で旅客船「セウォル号」が沈没
3 ノーベル平和賞にパキスタンのマララさんら
4 ウクライナでマレーシア航空機が撃墜され298人死亡
5 ロシアが「クリミア共和国」を国家承認、編入。ウクライナ危機深刻化
6 勢力を拡大する「イスラム国」に米軍がイラクで空爆開始
7 米中間選挙でオバマ政権与党の民主党が大敗
8 北京行きマレーシア航空機が消息絶つ
9 香港で行政長官選挙の民主化求めるデモ
10 英北部スコットランドが住民投票で英残留を決定
 読売新聞が用意した47項目から10項目を選んで応募する方法です。有効応募総数は昨年の5335通より大幅に増えて6348通でした。10項目的中者昨年はゼロでしたが今年は137人に増えました。
 私も応募しました。4年連続4回目です。おしいことに1項目を外し9項目が的中しました。3年前の2011年海外10大ニュースの的中率と同じでした。
今年は誰にも選べる事件や出来事がはっきりしていたのかもしれません。9項目以上の的中者は19.25%、8項目の的中者が最も多く32.53%でした。
 私が選んだのは9の代りに
14 タイでクーデター
でした。

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