今月はスポーツに焦点を当ててまとめてみました。
大相撲初場所で琴奨菊が10年ぶりに日本人力士として優勝しました。号外が出るくらい日本中が沸きました。次は日本人横綱が生まれるかもしれません。来場所が楽しみです。

 最初は弟のエッセイです。

 そのあとは手賀沼通信ブログから野球について書いたものを抜粋しました。

特別寄稿
スポーツにおけるルールとは何か(猫だまし異聞)
          新田自然


 昨年11月場所だったか、横綱白鵬が大関栃煌山戦において「猫だまし」という手を使ったとして物議をかもしたことがあった。猫だましとは、相撲の立ち合いにおいて、相手の目の前でぱちんと拍手してひるませ、その後の戦いを有利に進める一つの戦法である。ほとんど使われていなかったが、先場所の大相撲で白鵬が2度も使って、これが功を奏したのはわからないが結果的に勝利した。
 これに対し故北の湖理事長は「横綱の使う手ではない」と苦言を呈した。どうしてこれがいけないのか、私にはわからない。相手を掻きむしるとか、かみつくとか、そういった常識外の行為ではなく、相手に接触するでもない平和的手法だと言える。何より「猫だまし」と名付けられるように、ややユーモアの匂いさえする。もしその手が効果的だとすれば多用されるはずだが、あまり有効とも思えないため、数年に1回くらいしか使われていない。
 それより問題視すべきは、今大流行りの「張り手」ではなかろうか、まともにくらうと鼓膜が破れ、脳震盪を起こす恐れもあり、このほうがよほど危険で、相撲らしくない。相撲には禁じ手というのがあり、犯すと反則負けとなるが、これなどは禁じ手に加えるべきであろう。そういったことには目をつむり、横綱の行為に批判を加えるのはおかしい。要するにダメなものはダメとすべきであって、「勝利」を与えながら批判するというやり方は、なんとなくすっきりしない。
 相撲は勝負がすべてである。勝ち越せば番付は上がることはあっても絶対下がらない。負け越せば下がる。勝敗は行司が決め、勝負審判がチェックする。これはかなり厳正で公正に行われている。番付が上がれば給与も上がり、優勝者には賞金が付与され、取り組みごとの勝敗には懸賞がつく。ちなみに優勝賞金は1千万円で、懸賞金は諸経費を差し引き手取り3万円だそうで、人気力士の取り組みになると5,60個の懸賞がつく。
 相撲には八十二手という決まり手があって、これによって勝敗が決められる。「猫だまし」は決まり手ではなく戦法の1つで、立ち合い時に横っ跳びする「変化」も同類の戦法である。これらは立ち合い時の奇襲作戦であって、ルール上認められているが、上位者が使うとブーイングの対象となる。横綱が立ち合いで「変化」などすると、テレビ解説者は「横綱がこんなことしちゃあいけません」などと批判するのである。
 そもそも勝負がすべての世界で、ルールの範囲内で勝って非難されるのは、およそ相撲くらいである。もし仮に小兵力士がいたとして、体重がかなり勝敗を左右する相撲世界で、立ち合いの「変化」で勝ち上がって大関になり、2場所連続優勝したとする。2場所連続優勝は横綱推挙の条件である。こうなった場合彼は横綱になれないのだろうか。もしなったとしたら彼が勝ち続けてきた「立ち合いの変化」は封じなければならないのだろうか。

 改めてスポーツにおけるルールを考えてみたい。水泳の平泳ぎという種目に、かつて我が国が得意とした「潜水泳法」を取り入れてオリンピックで金メダルを獲得した古川という選手がいた。彼が勝ったオリンピックの金メダルは取り消されなかった。ルール通りで泳いだからだ、だがすぐにルールが改正され潜水泳法は認められなくなってしまった。これなどは国際水連の陰謀で、彼らは、自分たちが太刀打ちできないとなると、勝手にルールを書き換えるのだ。だけど決まってしまえばルールはルールだ。
 ほかのスポーツにおいて、例えばフェイントという戦法がある。バレーボールにおいて相手がジャンプしてこちらのスパイクを防止するのだが、それを欺いてひょいと相手のジャンプをかわすのである。テニスにおいても同様の手法がある。野球においては敬遠、隠し玉、サッカーにおけるオフサイドトラップという戦法もあって、正々堂々と戦わないのも1つの戦法として認められ、それで勝利してもブーイングが出るということはない。ボクシングでもクリンチという戦法があって、それをうまく使って勝ったとしても正当な勝利と認定される。
 ただし、激しいスポーツの世界では危険な行為は審判によって罰せられる。たとえば野球における危険球、ラグビーにおけるハイタックル、サッカーにおけるラフプレーなどルール違反は厳しく罰せられる。また、不正な手段で得た勝利は否定され没収されることだってある。ドーピング問題でロシア陸上界が揺れている。これなどはルール以前の問題で、いわば犯罪行為に近く、事実であるならば出場停止も当然のことだと思う。
 こういったそれぞれのスポーツにおいてルールはきちっと決められていて、その範囲内で得た勝利に対しては称賛されるのである。勝ち負けを競う以上、参加者全員が勝利にこだわるのは当然の行為で、勝利者には名誉や特権、賞金が与えられたりする。
 先般のラグビーワールドカップにおいて体力差で劣るジャパンが南ア戦において堂々と戦いを挑み、見事にこれを破り、奇跡だと称賛された。これはスポーツマンシップを発揮した見事な戦いであった。相手はゴールライン間際に攻め込まれ、反則を重ね、1名がシンビンとなって退出を命じられた。ペナルティキックなら同点引き分け、それをあえてせず正面攻撃をかけた、小兵軍団ジャパンに称賛が浴びせられたのは当然であった。だけどこの戦いにおいてノーサイド直前にペナルティキックを得た南アは、優位な体格であるにもかかわらず戦いを避けキックを選んでいた。これでもし南アが勝っても非難されることはなかっただろう。スポーツとはそういうものなのだ。
 スポーツの戦い方は大きく個人戦と団体戦に分けられる。個人戦においては、個人ごとに獲得した点数で競うものと、相手をねじ伏せる格闘技に分けられる。体格が勝敗を大きく左右する格闘技や、それに近い重量挙げなどにおいては細かくランク分けされ、体重によるハンディキャップをカバーする仕組みが作られている。格闘技とは、ボクシング、レスリング、柔道、テコンドーなどである。柔道においてはかつて無差別級という、体重差を無視したクラスがあったが、これも過去のものとなってしまった。格闘技の世界においては体格によってランクが決められ、その中で戦うのが常識となっていると解すべきであろう。

 いまの大相撲は、それを否定して、あえて無差別で戦わせているのである。だから舞の海のように小兵力士が武蔵丸といった大型力士を破ると「小よく大を制す」として喝采を受けるのである。だが大相撲においても体重差によるハンディキャップは歴然としてある。大きい力士が俄然有利なのである。いま大相撲の世界では横綱はすべて外国人、幕内でも約半数が外国人で占められる。日本人は外国人に比べると体格差で劣り、ハングリーで体力のある外国人力士に占められようとしている。
 スポーツとして相手に勝てばよいという格闘技と、伝統文化としての相撲が国際化という波の中で交錯している。担い手の半分が外国人で占められ、外国人観客も東京での開催場所では5千人を超えているようで、大相撲観戦のツアーさえあるそうだ。外国人観客は今後さらに増加していくことは十分考えられる。国際化するというのであれば、ルールの範囲内で堂々と戦い勝負を決する、という平明化は必須事項であると思う。

 しかし大相撲はわが国の伝統文化であり、神道や武道に裏打ちされた精神性や様式美が求められる興行でもある。髷を結い、ユニフォームはまわし1つ、土俵入りは形式にのっとり行われる。成績によってランク分けされ、報酬も決められている。その中での最高位にランクされる横綱には品格が求められる。つまり一般的なスポーツではない、だからしきたりの中でやればいいのだ、という反論もある。それもわからなくはない。
 そういった環境の中で、白鵬は日本人横綱になりきろうとした。優勝記録を塗り替えても「木鶏たりえず」などという多くの日本人も知らない言葉を用いて謙虚であった。だがあまりに強すぎて、観客は日本人力士に肩入れし、「稀勢の里コール」さえした。微妙な勝負では、相手に有利な判定をされた(と彼は感じた)、そこいらを境に白鵬の態度は明らかに歪んでいったように思える。特に先場所終盤における白鵬の負け方は違和感のある負け方であった。勝とうという意欲が感じられないのである。本人の力の衰えなのか、気持ちの変化によるものなのか、琴奨菊の優勝に湧く国技館、NHKさえも『日本人力士優勝』と絶叫する中で、彼の冷め具合が気になってしまった。
 大相撲はかつての不人気を脱し今は大盛況の中にある。だが、つい数年前は空席だらけだった。これは不況もあったが、八百長など、勝敗が金で買われるなどという不祥事が続き大衆に飽きられたことによることが大きい。相撲協会も改革に取り組み、ツィッターや、ゆるキャラ、女性客の取り込みなどの努力によって、力士と観客の距離が縮まり、幕内の半分は外国勢、横綱はすべてモンゴル勢に占められていても、人気がある。これは一時的なものか、それとも完全に回復したのであろうか、中長期的視点で今後進むべき道を考えねばならないところに来ている。
 そこで「猫だまし」に戻るが、今やパフォーマンスの派手な力士もいる。大量の塩を天井に向かって放り上げる力士、勝負の前に奇声を上げる力士、大きく後ろに反って気勢を上げる大関など、このような行為は許され、テレビもそういったパフォーマンスを期待さえしている。猫だまし、こんな茶目っ気のある戦術は認められるべきであって、批判の対象とするべきでなかろう。これくらいの手、パフォーマンスの1つだと、笑って済ませる余裕があってしかるべきだと思うが、さて…。(この拙文に対するご意見をお聞かせください)

手賀沼通信ブログ抜粋

原巨人監督ありがとう(NO.856)(平成27年10月20日)

 平成27年10月19日プロ野球原巨人監督は記者会見で引退を表明しました。
 原監督は会見で「ここ3年ほどチーム力は落ちてきている。新しいリーダー、監督に託すほうが正しい選択だと思い、こういう形になった」と語りました。
 今年は最後までヤクルトと激しい優勝争いを戦い、1.5ゲーム差で2位となりました。さらにクライマックスシリーズでもヤクルトに敗れて日本シリーズ進出を逃しました。
 怪我人続出のうえ、チーム打率リーグ最下位、打撃ベスト10に1人も入っていない貧打のチームで、最後まで優勝を争ったのは、原監督の采配のおかげと言えると思います。
 しかし、昨年までリーグ3連覇とは言え、1昨年は日本リーグで楽天に3勝4敗で敗退、昨年はリーグ優勝しながら、クライマックスシリーズで阪神に負け、今年はリーグ2位というのは、常に優勝を期待されている巨人の監督としては、責任を取らざるを得なかったのでしょう。
 原監督は2002年長嶋監督のあとを受けて巨人の監督になりました。その年、就任1年目でリーグ優勝、日本一になりました。しかし翌年3位となったため責任を取って辞めざるを得ませんでした。
 ところがあとを継いだ堀内監督がさらにひどい成績だったため、2006年に監督に復帰して今年まで10年監督を勤めました。
 12年間の成績は日本一3回、リーグ優勝7回(日本一3回を含む)、2位1回、3位3回、4位1回となっています。素晴らしい成績です。
 それと忘れてはならないのは、2009年には第2回ワールドベースボールクラシック(WBC)で日本代表監督としてチームを連覇に導いています。
 原監督、本当に長い間ご苦労さまでした。ありがとうございました。
 巨人の歴代監督を勝利数の順番に5番目まで並べてみました。
 なお、原監督の後任には高橋由伸外野手兼打撃コーチが挙がっています。それには現役を引退する必要があるでしょう。巨人の監督は兼任では務まりません。中日とは違います。
 私は本人の事情が許せば松井秀喜さんがベストと思います。だめなら桑田真澄さんにやらせてみてはと思っています。

 (後日談)原監督の後任には、ご存じのとおり現役選手を退いた40歳の高橋由伸氏が決まりました。
 セントラルリーグの監督は、ジャイアンツの高橋監督以外に、タイガースが金本監督、ベイスターズがラミレス監督に変わりました。全チームが40歳台の監督となり、その中でも高橋監督が最年少です。

2015 WBSC プレミア12が始まる(NO.862)(平成27年11月7日)

 平成27年11月6日プレミア12の野球練習強化試合で日本の侍ジャパンがプエルトリコに連勝しました。
 プレミア12の開幕は11月8日に侍ジャパンが札幌ドームで韓国と対戦しリーグ戦が始まります。
 プレミア12は今年から始まる野球のWBSCの国際大会です。
 WBSC(世界野球ソフトボール連盟)はオリンピック首都のスイスローザンヌに本部を置き、2013年に設立され、国際オリンピック委員会から認定された世界唯一の野球とソフトボールの管轄団体です。
 WBSCは世界141の加盟国から構成される代表チームが参加するすべての国際大会を統括しており、ソフトボールワールドチャンピオンシップ、プレミア12、ワールドベースボールクラシック、12U、15U、18U、21U、女子野球ベースボールワールドカップを管轄しています。
 プレミア12は世界のトップ12チームで、WBSCのワールドチャンピオンシップ大会(アンダー世代の12U〜21Uのベースボールワールドカップから2013年のWBCを含むWBSC公認国際大会)から得られた世界ランキングポイント上位12チームが選ばれました。
1次ラウンドリーグ戦のグループAは、(カッコ内は世界ランキング)
 ・キューバ(3位)
 ・台湾(4位)
 ・オランダ(5位)
 ・カナダ(7位)
 ・プエルトリコ(9位)
 ・イタリア(11位)
1次ラウンドグループBは
 ・日本(1位)
 ・アメリカ(2位)
 ・ドミニカ共和国(6位)
 ・韓国(8位)
 ・ベネズエラ(10位)
 ・メキシコ(12位)
の各6チームで、各ラウンド上位4チームが決勝トーナメントに進みます。
 1次リーグの日本の試合予定は11月8日韓国戦、11日メキシコ戦、12日ドミニカ共和国戦、14日アメリカ戦、15日ベネズエラ戦です。韓国戦以外は台湾で行われます。
 トーナメント戦は16日に始まり、21日が決勝戦です。準決勝、3位決定戦、決勝戦は東京ドームです。
 いずれも侮りがたい強チームです。ぜひトーナメント戦に進んで、優勝してもらいたいものと思います。
 がんばれ侍ジャパン!

 (後日談)侍ジャパンは、1次ラウンドを5勝無敗のトップで勝ち抜きました。
 8チームによるトーナメント戦では、侍ジャパンは準々決勝は9−3でプエルトリコに勝ちましたが、準決勝では韓国に3−4で逆転負けを喫しました。
 3位決定戦では11−1でメキシコに7回コールド勝ちを収めました。
 優勝はアメリカを破った韓国でした。

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