今月は今年2度目の国内パッケージツアーについての旅行記です。

北海道知床半島から釧路地方の旅

 平成28年7月6日から9日まで、阪急交通社の「じっくり巡る二度目の北海道4日間」というツアーに妻と参加しました。
 二度目の北海道というタイトルになっているのは、おそらく北海道の代表的観光地、「札幌」「函館」「小樽」「旭山動物園」「層雲峡」「阿寒湖」「洞爺湖」などが含まれず、北海道の東のはずれの地味な場所を回る旅行になっているためなのかもしれません。北海道の有名観光地はすでに行ったことがある人を対象にしているのでしょう。
 北海道の観光は、プライベートで計画して行ったのを含めると9回目になりますが、知床半島を除くと初めてのところばかりでした。妻は念願の釧路湿原を見ることが出来ました。

 なお日記風の旅行記は、7月の手賀沼通信ブログに載せています。

参考資料:Wikipediaの各サイト

1.「二度目の北海道」の旅の特徴
(1)さいはての地を巡る
 ネットで「さいはての地」を検索すると、納沙布岬が日本国内最東端として出てきました。納沙布岬の売店で、「日本本土最東端到達証明書」と書かれたカードをいただきました。
野付半島
野付半島
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 根室市から納沙布岬に至る道路は、周囲が広大な草原に囲まれており、いかにもさいはてへの道という感じでした。
 ネット検索の「さいはての地」には野付半島も出ていました。野付半島のトドワラ船着場は小さな桟橋以外何もありません。曇り空と強風と貝殻だらけの海岸を歩いたせいでいかにもそれらしい雰囲気でした。
 知床半島の最先端の知床岬は陸上からの道はないようです。観光船で知床岬沖まで行きましたが、その時船内で「知床岬視察証明書」が配られました。知床のウトロ港に行く途中「知床さいはて市場」というドライブインに立ち寄りました。
 以前購入した「るるぶ楽楽北海道」というJTBパブリッシングから出版された北海道全体の旅行ガイドには、根室や納沙布岬については載っていませんでした。また野付半島についての案内も出ていません。ガイドブックの副題は「必観!北海道のツボBest 40」ですが、この2か所は無視された感じです。

(2)北方四島の影が迫る
 今回の旅は北方四島を意識させられる旅でもありました。知床半島、野付半島、納沙布岬では、各所で国後島や歯舞群島の島影が目に留まり、土地の方々の北方四島への思いが偲ばれました。

(3)民謡に縁遠い場所
 北海道は民謡の豊富な土地です。例えば「ソーラン節」「北海盆唄」「江差追分」「道南口説」「鱈釣り節」「ナット節」「道南盆唄」「十勝馬唄」など数々の名曲があります。
 ところがこれらの民謡はほとんどが北海道の西半分の唄なのです。私の持っている「日本の民謡」には北海道の唄が63曲載っていますが、今回行った場所の唄は、野付半島と釧路の曲が各1曲づつでした。民謡はその土地と人と文化を表しています。特に北海道や東北の民謡は労働歌が多いのが特徴です。この辺りは民謡に唄われるような文化を育てたり、働きながら唄ったりする余裕が少なかったのかもしれません。

(4)美しい自然
 しかし各所でそれぞれ特徴のある美しい自然に巡りあうことが出来ました。
 最初に訪れた裏摩周湖展望台からは、霧と縁のない摩周湖が見渡せ、後ろを見ると斜里岳の勇姿が目を引きました。
 知床半島では海の青、岸壁の黒、木々の緑、滝から流れる水の白とカラフルな自然の美しさに魅せられました。
 野付半島の原生花園は花の真っ盛りでした。
 釧路湿原では湿原の植物の多様性に触れました。

2.知床半島の旅(世界自然遺産)
 知床半島は北海道の東の果てにオホーツク海に突き出た半島です。長さ約70km、半島付け根の幅が25kmの細長い半島で、西側がオホーツク海、東側が根室海峡に面しています。また、半島東側には国後島が平行する形で横たわっています。
 名前の由来はアイヌ語でシレトク(地山のさき)からきています。
 知床国立公園に指定されており、2005年に日本で3番目のユネスコの世界自然遺産に登録されました。
 西側の斜里町ウトロから東側の羅臼まで知床横断道路が通っています。冬期間通行止めになる北海道で唯一の国道です。
 私たちの知床観光は知床横断道路の738メートルのピークにある知床峠から始まりました。すぐそばには知床連山の最高峰1661メートルの羅臼岳がそびえていました。
 東に目を転ずると北方四島の一つの国後島がはっきりと見えました。峠には北方領土の地図と「北方領土はわが国固有の領土です」と書かれたスチール版が取り付けられていました。
 知床観光の目玉はウトロから出る知床観光船に乗って海から知床半島を眺めることです。知床半島の先端の知床岬まで往復3時間45分の船旅です。行きは船の右側の席から半島が眺められます。反対側は海しか見えません。帰りは逆になります。幸運にも右側の席に座ることが出来ました。
知床岬
知床岬
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 知床岬まで、半島のオホーツク海側はおおむね断崖絶壁が続きます。小さな岬やいろいろな形をした奇岩や大小さまざまな滝が次々と姿を現しました。知床連山もいろいろな角度から眺めることが出来ました。1989年に来たときはカムイワッカの滝のところで引き返したので1時間半の観光でしたが、今回はたっぷりと知床半島の景色を楽しめました。
 船内放送でときどき、「どこそこにヒグマが見えます」という放送がありましたが、岩しか見えず双眼鏡を持ってこなかったのが残念でした。船内で有料で双眼鏡を貸し出している意味が解りました。
 陸上からの知床観光は「フレぺの滝見物」と「知床五湖展望台」でした。
 知床自然センターでバスを降り、女性のネイチャイーガイドに案内されてフレペの滝見物に出かけました。
 ところが10数分歩いた時、行く方向にヒグマが出たという情報が入りました。知床半島は世界有数のヒグマの高密度の生息地です。そこから先は立ち入り禁止となりフレペの滝見物は中止となりました。ネイチャーガイドは万一に備えてヒグマ撃退スプレーを持っていましたが、まだ使ったことはないそうです。
 引き返す途中、ヒグマならぬ野生のエゾシカ2匹に出会いました。すぐそばに人がいても全く逃
湖に映る知床連山
湖に映る知床連山
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げる気配はありませんでした。
 知床五湖展望台もヒグマ生息地の中にあります。ところが知床五湖の展望台までは、世界遺産に登録後2010年に完成した高架木道を歩くため、クマに襲われる心配はありません。高架木道は地上数メートルの高さに作られており、木道の両側に7000ボルトの電流の電線が張り巡らされていました。高架木道は知床一湖近くまで800メートル続いています。クマが入れないのと同時に人も木道から出られないようになっていました。
 展望台からは知床一湖に映る知床連山が見事でした。

3.野付半島の旅(日本最大の砂嘴)
 野付半島は全長26キロ、日本最大の砂嘴(海上に長く突き出た形の、砂が堆積してできた半島)です。野付半島と野付湾は湿地の保全に関するラムサール条約に登録されています。また野付・風連道立自然公園になっています。
 三角の帆を持つ打瀬舟による北海シマエビ漁で有名です。
 野鳥の楽園とも言われており、240種の野鳥が確認されています。これは日本で確認されている鳥の40%だそうです。
 尾岱沼から定員50人程の観光船でトドワラ船着場につきました。トドワラとは海水に浸食され
ハマナスの花
ハマナスの花
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たトドマツのことで、野付半島に独特のわびしい雰囲気を醸し出していました。
 野付半島には半島の付け根部分には民家がありますが、その先は民家はほとんどなく、ネイチャーセンターや資材置き場があるくらいで、どんよりとした曇り空のせいか、今回訪れた中では、さいはての地という言葉が一番合っている感じがしました。
 ただ、ネイチャーセンターまで延びる砂利道は原生花園の一部で、道の両側にはハマナス、エゾカンゾウ、センダイハギ、エゾノシシウドなどの美しい花が咲き誇っていました。

4.納沙布岬の旅(北方四島にもっとも近い場所)
 納沙布岬は根室市の根室半島最東端の岬です。納沙布岬は北方四島返還一色という印象でした。
 北方四島とは択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島です。
 納沙布岬から一番近い島はわずか3.7kmの距離にある歯舞群島の貝殻島です。貝殻島は無人島で日本が作った灯台だけが立っています。曇り空だったため、肉眼では灯台が見えましたが、私の小型カメラには映っていませんでした。
 7km先の水晶島の島影もかすかに望めました。ここにはロシア警備隊の監視所があります。
 納沙布岬の周辺には、北方四島関連の施設やディスプレイがいくつもありました。
 2階建ての望郷の家は第2次大戦後、北方領土の島々を追われた元島民の心のよりどころとして昭和47年に開設されました。戦前の島民の生活関連資料や島々における街並みや住居表示を織り込んだ地図などが展示されていました。
 その隣にある同じ2階建ての北方館には、北方領土問題の発生の状況や歴史的経緯についての展示資料がありました。北方領土返還要求署名コーナーでは妻ともども北方領土返還を願って署名しました。
四島(しま)のかけはし
四島(しま)のかけはし
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 北方領土を向いたコンクリート舗装の地面には、いくつもの絵が描かれていました。現在地を示す表示や北方四島の地図や各島までの距離などが、カラフルなペンキで描かれ、その上に立つことができるようになっていました。
 納沙布岬で一番目立つのは「四島(しま)のかけはし」と言われる建造物です。世界平和と、北方領土返還を祈念するために作られたシンボル像です。高さ13m、底辺の長さ35mあり4つの島をかたどっています。像の下には「祈りの火」と呼ばれる点火灯台があり、火種は沖縄の平和祈念公園の平和の火から持ってこられました。

5.釧路湿原の旅(日本最大の湿原)
 釧路湿原は面積18,290ヘクタールの日本最大の湿原です。屈斜路湖を水源とする釧路川下流域に広がっており、釧路湿原国立公園になっています。1980年にラムサール条約登録地に指定されました。
 釧路湿原は特別天然記念物「タンチョウ」の飛来地としても知られています。
 湿原の大部分はヨシやスゲの湿原ですが、ミズゴケ湿原も一部あり、食虫植物のモウセンゴケやコタヌキモが生育します。また、タンチョウやエゾセンニュウ、ベニマシコなどの多くの鳥類の繁殖地・休息地となっています。
 特に2月から3月にかけて優雅な舞いが見られるタンチョウの夏季繁殖地は、湿原を含む道東各地に広がっていますが、冬には釧路湿原へ戻ってきて越冬します。今回どこかでタンチョウが見られるかと期待していたところ、「のろっこ号」を下車し中標津空港へ向かう途中で、2羽のタンチョウが餌をついばんでいるところを見ることが出来ました。
 また、日本最大の淡水魚であるイトウ(サケ科)やキタサンショウウオなどの希少な動物も多く、貴重な自然の残る領域です。
 釧路湿原を観光する方法はいくつかあります。
・いくつかある展望台から眺める方法
・湿原の木道を歩いて観察する方法
・カヌー等で川下りしながら観察する方法
・JR釧網本線の列車から眺める方法
 私たちは決められた時間だったため、木道を歩く方法と釧網本線の「のろっこ号」の車窓から釧路湿原を楽しみました。
 まず温根内地区の湿原を木道から観察しました。木道は広々しており、尾瀬の木道より立派です。尾瀬の木道は人が湿原に入って、貴重な植物を踏み荒らさないようにするため作られましたが、釧路湿原の木道は湿原が底なし沼になっていて、人が足を踏み入れると沈んでしまうので、命の危険を防ぐことが第一目的とのことでした。
釧路湿原と木道
釧路湿原と木道
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 女性のネイチャーガイドが丁寧に説明してくれました。よし原、草原、花、林、森などいろいろな植物を、立ち止まって指さしながらの説明でした。沼の不気味さも実演してくれました。
 釧路駅に戻って「のろっこ号」に乗りました。終点は塘路です。「のろっこ号」は大きな窓で、湿原を時速30キロでゆっくり走り、見物しやすくなっています。釧路川の景色が目に沁みました。
 木道を歩いたときは曇っていて、暑さを感じることなく観察できました。ところが鉄道に乗る前には快晴の空となり、素晴らしい眺めを楽しむことが出来ました。

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