柏の高齢者の会の会長家田氏からの本についてのご寄稿と弟から映画についてのエッセイを頂きました。ありがとうございました。
 あとは手賀沼通信ブログからの抜粋です。

「家族と言う名のクスリ」(金美齢著、2016年3月発行)のご紹介    家田 和利 89歳

 本人の履歴に依れば、1934年台湾生まれ。59年留学生として来日し早大英文科、同大学院文学研究科博士課程単位終了。英ケンブリッジ大学客員研究員、早大文学部講師等を経てJET日本語学校校長を務め同校名誉理事長、評論家。
 台湾独立を願い、日台親善にも努め、政治、教育、社会問題等でも積極的に発言。テレビ討論番組の論客としても知られる。著書は「日本ほど格差のない国はありません!」「私は、なぜ日本国民となったのか」「美しく齢を重ねる」「この世の偽善(共著)」「この世の欺瞞(共著)」「凛とした子育て」等。
 戦後70年過ぎてこの間、日本は価値観の多様化が称揚され、個人の自由が最大限尊重される社会が望ましいと、それを目標に人間と社会の在り方を変えようとして来た。その流れの中で、親子や家族の絆を戦前の「家制度」に縛られた負の要素を退け、「個人の自由」「個人の権利」尊重の名の下に、人間社会を砂粒の様に解釈する方向の言説が勢いを得て、多くの国民、特に女性の間に浸透して了った感がある。
 この十数年の社会現象やベストセラー書のキーワードを見ても「おひとりさま」の他に「晩婚・未婚・非婚」「パラサイト・シングル」「負け犬」等がある。結婚しない、家庭に束縛されない、自由な生活を志向する独身女性が増え、結婚して家庭を持つ事は、最早面倒くさい事と考えられる様にさえなって居る。
 結婚する事、子供を産む事、家庭を作る事は「個人」としての「自己実現」を阻む人生の重荷でしかないのか。「一家団欒」は「人の心の自由を失わせる」のだろうか?から本書が始まる。
 日本には「子を持って知る親の恩」と言う格言が昔から存在する。人間として苦楽を経て築き上げる家庭の良さを改めて思う事しきり。家族と生涯を過ごせば「最後は独り」ではなく、夫婦、親子、家族が表面的な取り繕いよりもお互いの人生観をぶっつけ合い、語り合う事の方が余程人生を楽しく有意義にして呉れる。金さんは台湾生まれ丈に生来の日本人のルーズさと違って金銭感覚が鋭く、「お金」にシビアである。巻末に母娘特別対談がある。
 娘、周麻耶さんは1965年東京生まれ、慶大文学部英米文学科卒業、89年TBS入社。以来、制作局で情報番組やバラエテイ番組に携わり「はなまるマーケット」等を担当等々で、現在は営業局営業開発担当部長。家族は同業の夫と娘2人。
 対談の中で、国立大学でなく私立大学で然も一浪して居るので、金さんは金銭援助を控え、周さんはバイトし乍ら勉強したと言う。色々あっても家族を持つと言うのはとても幸せな事、ママ・パパ丈でなくて、夫の両親とも親子になり、子供が生まれてからはかけがえのない子供を、同じようにかけがえのないと思って呉れる夫の両親も、本当に有難い存在だ、と言う事でしょうか、と。

「ローマの休日」と「旅情」と    新田自然  79歳

 「ローマの休日(原題Roman holiday)」という映画が、わが国で封切られたのが昭和29年のことで、「旅情(原題Summertime)」は昭和30年だった。まだ戦後といわれる時代、私が高校生だったころである。だからローマというところも、ヴェニス(当時はアメリカ式にこう呼ばれていた)というところも、地理や歴史の本で知ってはいたが、遠い国の話で、後年われわれが、わりと簡単に訪れることができる都市になるとは、思いもつかぬことであった。そういえばあの当時、洋画は別世界の夢物語として見ていたような気がする。イタリアはわが国同様、敗戦国で、インフレが進み、まだ混乱の中にあったが、敗戦3ヶ国のうちでは、観光の面では一歩先を行っていたような気がする。そのイタリアの2つの街を背景に展開された、旅先でのラブロマンスの映画であった。当時豊かさの代名詞であったアメリカ人にとっても、イタリアの旅は好奇心に満ちた観光旅行であったようで、だからこれらの映画は大ヒットし、莫大な興行収入を上げた。

 前置きが長くなってしまったが、「手賀沼通信」の募集テーマとして、私はこれまでに観た映画のうち最も印象に残っている「ローマの休日」について書いてみようと思っている。この「通信」の読者の方々は、昭和も前半にお生まれの方が多いと判断し、この作品はご覧になっているものとして書かせていただく。「ローマの休日」をより印象付けるため、本来なら題名を「ヴェニスの休日」としてもいい「旅情」という映画を引き合いに出して、比較しながら話を進める。
 「ローマの休日」のストーリーは、ヨーロッパ主要国親善の旅に出た某国王女アンは最後の目的地ローマに到着した。連日繰り返される退屈な公式行事のスケジュールに疲れ、ヒステリーを起こす。睡眠薬を投与されたが効かない、窓から聞こえてくる楽しそうな音楽につられ、そっと宿泊所を抜け出たアンは公園のベンチで寝てしまう、通りかかったアメリカ人新聞記者ジョーに起こされ、彼のアパートまで行って寝込んでしまう。翌日、アンの素性を知ったジョーは、特ダネをものにしようとアンをローマ見物に誘い出し、ローマの観光地を案内し、夜のダンスパーティに誘い、友人を使って秘かにカメラに収める。一方王国の大使館は、王女の失踪という大スキャンダルを収拾させようと秘密警察を連れてきて騒動となる。川に飛び込んで逃げる2人、それらを通じて2人は恋におちいってしまう。しかしアンは自らの立場を認識し、宿舎に戻ることを告げ、悲しい別離となってしまう。翌日開催された記者会見で2人は王女と記者として顔を合わせるが…。
 一方「旅情」、アメリカの地方都市の会社秘書を長く勤めるジェーンは、長期休暇を取ってあこがれの地ヴェニスを訪れる。もうオールド・ミス(当時こんな言葉があった)といわれる年齢になっているジェーンは恋愛恐怖症、ホテルでも誰にも相手にされず、サンマルコ広場で孤独でアンニュイな時間を送っていた。そこで声をかけてきた中年の男性レナート(ロッサ―ノ・ブラッツイ)と知り合い、ヴェネツィアの街やムラーノ島などを訪ねているうち、恋におちいってしまう。ついに深い関係に陥った2人、しかしジェーンは、去らねばならない自らを自覚し、翌日出立することを告げる。ヴェネツィア・サンタルチア駅、列車が入って来てもなお、彼女は彼の姿を探し求める。無情に列車は動き始める。車窓から身を乗り出し、ひたすら彼を探し求めるジェーン。そしてついに彼の姿を見つけるが…。

 こういったストーリーであり、いずれもイタリアの世界的に有名な観光都市をバックにした、片方はおとぎ話のような24時間の淡い恋物語、もう一方は数日間の大人の恋の物語である。悲しい別れ話でもあるが、ちょっと甘いミルクセーキと、ほろ苦いコーヒーの違いがある。当時16歳であった私の心は、苦いコーヒーの味は十分に理解できなかったが、このふたつの都市に深い印象と大きな憧れを抱いた。
 「ローマの休日」を見に行ったのは、当時付き合っていた同級生Mさんと一緒だった。見終わった私たちは、ふたりで松山の街を歩いた。雨が止んで夜の路面が光っていた。まあこの話は作品とは無関係でありこれくらいにするが、映画の印象は、見たときの年齢、誰と行ったか、といった環境に支配されるため、評価が左右されることになる。そんなこともあって「ローマの休日」は忘れられない映画となったのかもしれない。

 2つの作品を比べてみると、「ローマの休日」はどちらかというと小品で、当時「総天然色」といったカラー作品でもなく、印象に残る映画音楽もない(当時大作といわれる作品には必ずと言っていいほど素晴らしい映画音楽がつけられていた)、主演女優は出演料のかからない新人のオードリー・ヘップバーンだった。要するに大作として作られていなかったのではないかと思うのだ。一方「旅情」は美しいヴェネツィアの街がカラーで紹介され、テーマミュージックは「サマータイム・イン・ヴェニス」いう甘美なメロデイがつけられ、主演女優は大スターであるキャサリン・ヘップバーンだった。この映画には旅先で旅行者の味わう孤独感や、倦怠感がよく出ていたと思うし、美しいといわれたヴェネツィアの必ずしもそうでない風景などがカラーでリアルにスケッチされ、作品としての出来は悪くなかった。
 しかしオードリーはみごとにアカデミー主演女優賞に輝いたが、キャサリンはノミネートこそされたが、オスカーは獲得できなかった。それはオードリー・ヘップバーンという、奇跡のような不世出の女優の出現に世界が驚愕したことに他ならない。彼女の登場は既存の映画スターのイメージを、まったく変えてしまうほどのものだった。ヴィヴィアンリーにも、エリザベス・テイラーにも、エヴァ・ガードナーにもない、みずみずしさを持っていた。しいていえばイングリッド・バーグマンを初めて見た時と同じ衝撃だった。
 アンの美容室でのショートカットによるヘップバーンスタイルへの変身、ジェラート(そういう言葉を知らなかった)を食べるスペイン広場、恋におちてしまい、彼との楽しい市民生活を夢見ながらも、カボチャの馬車が来れば去らねばならない王女としての立場、それらを彼女の個性とともに演じきったオードリーには称賛以外の言葉もない。
 オスカーにはノミネートされなかったが、グレゴリー・ペックも素晴らしかった。アンを自分の部屋に連れて行って寝かしつけるシーン、スクーターに2人乗りして回るシーンや、「真実の口」に手を突っ込んで抜けられなくなってしまった演技など、善意のアメリカ人を見事に演じきっていた。「旅情」のロッサ―ノ・ブラッツイは過去のあるハンサムな中年の色男を演じてはいたが、普通の演技で、取り立てて言うほどの印象は残っていない。
 これらの旅先での恋は、かりそめの恋、到底実らぬものと悟っていたアンとジェーン、そのことを伝えるシーンは悲しく、見応えがあった。
 「旅情」では駅にレナートが花束をもって送りに来たが、列車はもう動き出して、彼は走って渡そうとしたが、ついに手渡すことはかなわなかった。車窓より身を乗り出して叫ぶ「さようなら、レナート」素晴らしいサマータイムの旅先での恋よ、さようなら。
 「ローマの休日」では王女に戻ったアンが共同の記者会見に臨むシーンが印象深かった。王女のローマでの写真を撮りまくっていたジョーの親友がそれを渡し、公表することはないと目で伝える。ジョーは昨日起こった事柄には触れず、ふたりにしかわからない言葉やしぐさ、見つめ合って、「お互いに知り合って本当によかったね」と意思疎通するシーン、記者が「どこの都市が一番印象に残りましたか」と問うと、王女は「それぞれにいいところがあり…」と言いかけて、ジョーを見つめながら「ローマです」と決然と言い放つ。ジョーはうなずく。アンにとってローマの素晴らしい休日は終わった。会見が終わってジョーが会場を去る靴音が天井に響いていたのが耳に残っている。そういえばグレゴリー・ペックのファッションは、ズボンはだぶだぶ、靴は皮底の靴で、コツコツと鳴っていた。
 オードリーのファッションは今でも十分通用するし、王女として正装する姿もりりしく、パジャマの彼女も可愛かった。キャサリンのファッションには特段のものがなかったが、ハイミスのOLだからしょうがないとして、スリーレンズが回転する16ミリカメラ(ズーム機能)をもって旅行する姿が、現在のスマホ持参のニッポンのオフィスレディに重なる。
 先日この作品がテレビで放映されていた。もう数十回も放送されているだろうが、改めてその画像に思わず見入ってしまった。黒白の画面はかえって新鮮にオードリーを浮き出させていたし、ペックの笑顔もよかった。面白い発見は、あの当時からヨーロッパ諸国の統合(EU問題)が課題となっていて、記者会見で意見を求められるシーンがあったり、ジョーから父親の仕事のことを聞かれ、父には定年(退位)がありませんというやりとりなど、あとで見るとその時気付かなかった今日的話題があったりして興味深かった。
 後年になって私も、これらの都市を訪ねる機会があったが、ローマは大きすぎて、また訪ねた場所が違っていたりしたこともあって、充分に思い出に浸れなかったが、「旅情」でのヴェネツィアの小さな町角、運河の水のグリーン、ジェーンが列車からアドリア海を眺めるシーンなどは強く印象に残っている。ヴェネツィアの島への長いブリッジから眺めながらこのシーンを思い浮かべ、遠い時間の積み重なりをかみしめることができた。
 若き日の映画が、数十年の時を経て甦る、この奇跡を感じながら、2つの映画を見ていてよかった、と心から思った。

手賀沼通信ブログ抜粋

年金改革法が成立(NO.975)(平成28年12月16日)

 平成28年12月14日、公的年金の給付額の改定ルールを見直す年金改革法が成立しました。
 年金というと分かりにくいということが通り相場ですが、今回の改革も分かりにくい改革です。民進党は「年金カット法案」と批判して反対しましたが、これは的外れの批判でした。
 2004年の年金改革で「マクロ経済スライド」という制度を導入しました。これがまた大変わかりにくい制度ですが、それが時の政府によって完全には実施されなかったのです。選挙のためでしょうか、当時の政府はデフレ下で賃金や物価が下がっても、年金は下げなかったのです。
 年金は主として現役世代が納める保険料で、高齢者に支給されます。高齢者が現役の時に積み立てた保険料から支払われるのではないのです。
 年金原資の年間の総収入は賃金の変動によって増減します。賃金が下がれば支給される年金も下げなければ収支が悪化します。それでなくても少子高齢化によって、今後の年金水準の低下は避けられません。
 今回の改革は、わかりやすく言えば賃金や物価の増減を、年金額の増減にそのまま反映させようとするものです。ただ、今まで賃金や物価の下落を年金に反映していないため、その分の借りは返してもらおうとしています。高齢者に少し我慢してもらって、年金制度を維持しようとするものです。

 改革のポイントは以下の通りです。
1.「賃金・物価スライド」徹底など、年金給付額の改定ルールを見直し、将来世代の給付水準を確保。
 たとえば賃金が物価より大きく下がっても年金が物価分しか減額されない現状を、賃金に連動して下げる
2.年金積立金管理運用法人(GPIF)に合議制の経営委員会を設置するなど、組織見直し
3.従業員500人以下の企業でも労使の合意などで、パートなどの短時間労働者を厚生年金の加入対象とできる
4.国民年金1号被保険者の保険料を産前産後4か月間免除
5.日本年金機構に不要財産が生じた際、国庫納付する手続きを規定
 年金制度にはまだまだ改革しなければならないところが残っています。少子高齢化を前提に、国を挙げて年金制度の維持に真剣に取り組んでほしいものです。

2016日本10大ニュース(NO.977)(平成28年12月22日)

 平成28年12月23日、読売新聞の読者が選んだ「2016年日本10大ニュース」が決まりました。
1 熊本地震、死者50人
2 東京都知事に小池百合子氏。
  築地市場の豊洲移転延期、五輪施設計画見直し
3 リオ五輪、史上最大のメダル41個
4 天皇陛下、退位のご意向を示唆
5 オバマ大統領が広島訪問
6 ノーベル生理学・医学賞に大隅氏
7 北海道新幹線が開業
8 相模原市の障害者施設で19人刺殺
9 18歳選挙権施行
10 「ポケモンGO」日本で配信開始

 読売新聞が用意した11月までの66項目から10項目を選んで応募する方法です。有効応募総数は昨年の10767通より大幅に増えて14472通でした。
 10項目的中者は昨年の4人から大幅に増えて31人でした。今年は7項目の的中者が一番多く28.7%でした。
 私も投票しました。9,10位の代りに
13 長野でスキーバス転落、15人死亡
24 消費税引き上げを2年半延期
を入れました。
 8項目の的中でした。9が入るのはわかりますが、「ポケモンGO」が入るとは思いもよらなかったという感じです。世代の違いでしょうね。スマホを持っていない私には想定外でした。

 2016年海外10大ニュースは来月号の手賀沼通信ブログ抜粋に掲載する予定です。

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