手賀沼にまた環境上の危機が訪れようとしています。
 手賀沼の水質は2000年までダントツのワースト1位でした。ワーストナンバーワンは27年間続きました。2000年に利根川の水を江戸川に流す北千葉導水路が完成、その一部の水を手賀沼に流すことによって水質が改善、ワーストナンバーワンを脱することができました。現在は手賀沼でトライアスロンを開催するほど改善されています。
 ところが特定外来生物が手賀沼に繁殖するようになって、新たな危機が生まれています。

特定外来生物(植物)による手賀沼の危機

1.手賀沼公園の沼岸にごみがたまる
 ゴミがたまっていたのに気が付いたのは3月初めの散歩中のことでした。
 その様子を下記のように手賀沼通信ブログに書きました。(文章と写真の一部は省略と変更)


2018年3月 4日 (日)
手賀沼公園の沼岸がごみでいっぱい(NO.1103)
(画像のクリックで拡大表示)
 平成30年3月4日手賀沼公園を散歩しました。天気予報が最高気温20度を超えるとの事だったので、春の景色を写真に撮ろうとカメラを持って出かけたのです。
 ところが待っていたのはとんでもない風景でした。手賀沼公園の沼の岸辺がごみであふれていたのです。
 手賀沼公園の沼岸は市民の憩いの場所になっていす。我孫子市の観光の目玉でもあります。それがこの有様です。この場所にこんなにごみが集まっているのを見るのは初めてです。
 なぜゴミが集まったのか理由はわかりません。異常天気のせいでしょうか。風の向きが変わったのでしょうか。
 渡り鳥もとまどっていました。
 ここには以前ゴミの侵入を防ぐ装置があったのですが、それがなくなっていました。しかしごみの量とごみの内容を見るとそれが原因とは言えません。
 いずれにせよ手賀沼を管理する部署は一刻も早くごみを取り除いてほしいと思います。

   そして我孫子市の手賀沼課に電話をして手賀沼のごみの様子を伝えました。
 手賀沼は千葉県が管理することになっているのですが、手賀沼課で何とかできないかと思ったからです。
 手賀沼課は千葉県に連絡したようですが、千葉県では今年はごみの清掃の予算をとっていないとのことで、手賀沼課で3月22日にごみを取り除きました。
 当日の午後3時ころ手賀沼に行ってみました。ごみはなくなっていました。その様子を3月22日の手賀沼通信ブログに書き、お礼の手紙を手賀沼課に出しました。

2.我孫子市手賀沼課に手紙を出す
 ところが4月に手賀沼を散歩していてまたゴミがたまっていることに気が付きました。3月ほどではないのですが、ごみの浮島が出来てその上に草が生えていました。
 4月21日に手賀沼課長あてに手紙を出しました。3月は電話で伝えたのですが、今度は手紙にしました。

我孫子市役所 環境経済部 手賀沼課
課長 鷹屋 肇 様

拝啓 いつも手賀沼浄化に精力的に取り組んでくださりありがとうございます。
 私は若松に住んでおります新田良昭(81歳)と申します。手賀沼の沼岸のごみについて先月お手紙と電話をさせていただいたものです。

 3月22日と23日に手賀沼を見に行きました。きれいにごみが無くなっていました。ありがとうございました。
 早急に手を打って下さったこと、手賀沼課はいいお仕事をなさっていると感心いたしました。

 ところが4月になって先月ほどではありませんが、添付写真にありますようにまたごみが集まっております。
手賀沼は我孫子市の観光の目玉ともいうべき場所であります。ゴールデンウィークには間に合わないかもしれませんが、1日でも早くきれいになるよう願っております。このままにしておくと気温の上昇とともに、水質の汚濁と悪臭の発生につながると思います。

手賀沼の管理は千葉県と伺っておりますので、千葉県に対して以下のようなお願いをされてはいかがでしょうか。専門家に対して大変失礼なこととは存じますし、あるいはすでに手を打たれておられるかもしれませんが、毎日手賀沼を散歩している一老人の言葉としてお許しください。

・ごみの発生源を調査し、発生を抑える方策をとる
・今あるごみを処分する。
・今後定期的にごみの発生を監視し、ごみが出たら処分する。
 (ヨーロッパやアジアの河川や運河などではごみ収集を専門とする船が活躍しています)

勝手なことばかり申してすみません。
 手賀沼課の今後のご発展をお祈りいたします。

敬具

添付:4月21日現在の手賀沼のごみの写真
添付した写真の一部です。
(画像のクリックで拡大表示)


3.手賀沼課から返事をいただく
 その後手賀沼を散歩するたびに見ましたが、沼岸の状態は変わっていませんでした。手賀沼課長への手紙は無視されたと思っていました。
 ところが5月8日に手賀沼課長から下記のような手紙をいただきました。

「手賀沼公園に漂着する特定外来生物(植物)について」

 日頃より手賀沼に関心をお寄せいただき誠にありがとうございます。3月には手賀沼公園の護岸につきましてご連絡をいただきましたお蔭で、クリーン手賀沼推進協議会と連携し、迅速に駆除を行うことができました。
 今回もご連絡いただいたように、3月と同じ場所に再び漂着しているものにつきましては、私どもでも把握しているところではありますが、先月の駆除から日を置かずして漂着しており頭を悩ませているところです。
 漂着しているものは、環境省が指定する特定外来生物(水生植物)「ナガエツルノゲイトウ」です。茎の破片からも再生するという繁殖力の高さで様々な問題を引き起こしており、手賀沼だけでなく、印旛沼をはじめ彦根市の神上沼や大阪市の淀川でも問題となっています。特に、手賀沼に隣接する印旛沼では猛威を振るっており、排水機場のポンプに絡まって動作不良を引き起こすことで治水問題になったり、在来植物と置き換わって繁茂してしまうため、生態系の悪化にも影響していると言われています。
 手賀沼のナガエツルノゲイトウは、印旛沼から農業灌漑用水に破片が混入してきたと推察されています。現在は柏側にある北千葉導水第二機場周辺、大津川、大堀川の河口(柏ふるさと公園周辺)で大きな群落を形成しています。
 大変厄介なことに、柏側にある大規模な群落に対して、対策をたてないことには、南風時にいくらでも我孫子側に漂着してしまうため、現在手賀沼公園で行っている駆除には限界があります。さらに昨年、ナガエツルノゲイトウと似た特徴を持つ「オオバナミズキンバイ」が見つかっており、こちらについても今後、同様の影響が出ることが懸念されています。
 発生源の調査及び対策、駆除については、これまでも手賀沼の河川管理者である千葉県に提言してきており、現在は千葉県が事務局を務める「手賀沼水環境保全協議会」(構成:千葉県、手賀沼流域市(我孫子市、柏市、印西市、松戸市、流山市、白井市、鎌ケ谷市)、手賀沼にある2つの漁協、2つの土地改良区、美しい手賀沼を愛する市民の連合会(市民団体))でも課題として取り上げています。
 新田様からもご助言いただきましたように、現時点では市民団体と連携し、漂着したものを駆除しながら、根本的な解決策について検討をすすめていますので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。


「ナガエツルノゲイトウ」という外来植物がごみの大本ということは全く知りませんでした。
外来生物が従来の生態系に悪影響を与えるということはよく聞いてきましたが、ごみの発生源になることもあるのです。

4.特定外来植物の繁殖地を見て回る
 いただいた手紙に出ている、大津川の河口、北千葉導水第二機場周辺、大堀川の河口を見て回りました。いずれも我孫子市でなく柏市になります。自転車で手賀沼を半周して写真を撮りました。
 この写真(左下)は大津川の河口です。橋の上からとったのですが、先がはっきり見えないくらい植物が繁茂していました。
(画像のクリックで拡大表示)
 北千葉導水第二機場の前はやはり植物が陣地を広げていました。
 大堀川河口は北千葉導水路の近くにあります。外来植物の範囲はつながっている感じでした。
 手賀沼緑道から撮った写真ではその広さははっきりとはわかりませんが、かなり広いことが判りました。ドローンで撮ればもっと正確に把握できるのではないでしょうか。
 写真の中のどれが「ナガエツルノゲイトウ」かはわかりませんでした。

5.「ナガエツルノゲイトウ」の特徴
 いただいた手紙に下記の資料が同封されていました。

<ナガエツルノゲイトウについて>
・南米原産、ナデシコ目ヒユ科の多年草
・水辺の湿った環境に生え、茎の長さは1m以上にもなる。匍匐した基部から数多く分岐し、発根する。岸から延びだした群落が増水などによって切り離され、別の場所に漂着。漂着した場所でも繁茂する。葉や茎の切片からも増殖・繁茂し、駆除して陸地にあげると陸地でも繁茂する。特に日当たりのよい肥沃な条件下では急激に繁殖する。
・1989年に兵庫県尼崎市で採集。本州西部以西〜沖縄に繁茂域拡大。同じ利根川水域の印旛沼では1990年に初確認され、今日全域に繁茂している。同沼では2010年「印旛沼流域水循環健全化計画』第1期行動計画(2009年〜2015年)に、カミツキガメとともに駆除すべき生物として盛り込まれ、「ナガエツルノゲイトウ共同駆除作戦」を実施。2016年8月にはIVUSA(国際ボランティア協会)から80人の学生も参加協力し、2日間で28トンのナガエツルノゲイトウを駆除した。
・印旛沼では2014年2月、低気圧による洪水の際、ナガエツルノゲイトウの群落が大和田排水機場(大雨の際洪水を防ぐための排水施設)に大量に漂着し、排水を困難にするという危機的な状況を現出させた。
・今後も予想される実害として、@排水機場をふさぐことによる洪水、A田んぼに侵入し、稲と混合して生育・収穫されることからくる障害(トラクターの故障、田んぼ全体へのナガエツルノゲイトウの拡散)があげられる。


 ごみは浮島なので日によって形が変わっていました。ところが5月28日に行ってみたところ浮島が消えたのです。
 手賀沼課が処分したと思いお礼を言うため手賀沼課長に電話しました。ところが手賀沼課は何もしていないとのことでした。
 課長のお話では、浮島なので風に流されて公園の沼岸からは消えたようだとのことでした。
 手賀沼は最終的には利根川に流れています。「途中のどこかに漂着しているのではないか、船からでないと岸からは確認するのが難しいのではないか」とのお話でした。
 今後台風やこの冬の西風でまたゴミが出現する可能性は大です。ナガエツルノゲイトウは繁殖力が強く、手賀沼公園の沼岸からからなくなったと喜んでばかりではいられないようです。

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